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ネクゼタリーさんはほーじくんの頭を撫でてから、とぼとぼと歩いていく。
俺達はそれを見送って、また歩く。軽く、手をつないでいる。指と指とがちょっと触れあうくらい。
「ネクゼタリーさん、いいひとだね」
「ん」
「俺、変に誤解してた」
「マオは、言葉、わからなかった。仕方ないよ」
頭を振る。
ネクゼタリーさんは、左耳になにも飾りをつけていないみたいだった。
髪の毛で隠れているから、はっきりとは見えなかった。けれど、彼の左耳は、欠けているようだった。少なくとも、下半分が見えなかった。
それが、開拓者や、そのほかの神々の意向なのかどうか、俺は知らない。もしそうだとしたら反吐が出るが、そういう「システム」なのだとしたら仕方がない。
それだけの損失が出る可能性があっても、ネクゼタリーさんはおまじないをした。彼は自分を犠牲にすることに慣れすぎてる。
街道に至る。リャクークがぴょこぴょこ走ってきた。ぴい、と小さく鳴く。「おはよう、リャクーク」
ぴぴ、と返事してくれた。可愛い。
リャクークは、朝食中だったよう。口のなかにドライさぼてんがはいっている。
ほーじくんがリャクークの鼻面を撫ではじめた。リャクークは地面にお尻をつけるようにして座り、目を瞑って、ほーじくんに撫でてもらっている。嬉しそうに見えた。リャクークは、ほーじくんになついてる。
軽いあしおとに目を遣ると、ヨヨとシシが手をつないでやってくるところだった。ヨヨが片手を軽く振る。「まお」
俺はふたりと目の高さを合わせるように、しゃがみこんだ。
「おはよう、ヨヨ、シシ」
「……おはよ」
シシがもごもごと返事してくれた。シシは使役していないので、発音は不明瞭で聴きとりづらい。でも、俺に対して礼を尽くそうとしてくれているのは伝わってきた。
ヨヨははにかんだみたいに笑って、シシの腕を撫でている。「マオ?」
「うん」
「シシ。ヨヨの。なかよし」
辿々しいが、多分、この子は自分の一番の友達だ、というようなことを云いたいのだろう。俺は頷いて、ヨヨの頭を撫でた。「同じ群れの子?」
ヨヨは深く頷く。短い毛が生えたニーバグの体表は、上等なスウェードみたいで、触り心地がいい。
そうか。同じ群れだったんだ。じゃあ、ヨヨが居なくなって、心配してさがしていたのかな。ニーバグひとりで、大変だったろうに。厚い友情、という言葉が脳裏にひらめく。
ヨヨはシシの腕をとって、ご機嫌だ。シシはにこにこしている。
「ねえ、ヨヨ。帰りたいなら、そうしてもいいよ」




