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俺は立ち停まり、ほーじくんも立ち停まった。「おはようございます」
「おはようございます、マオさん、ほーじ」
ネクゼタリーさんは微笑んで頭を下げ、俺達の前で停まる。ユラちゃんは興味がないみたいで、すーっと俺達とすれ違った。「おはよう、マオ、ほーじ。ご飯戴くわね」
「うん。くだもののゼリーがあるよ」
ユラちゃんが走りだした。彼女は素直で、可愛い。
ダストくんは、収納空間に持っているドライさぼてんを、トゥアフェーノ達にあげているって。
ネクゼタリーさんはにこっとする。「彼は優しいですね。トゥアフェーノ達が不安そうなので、しばらく一緒に居てくれるそうです」
「サーダあにさまは?」
「サーダも一緒に居るそうですよ」
ネクゼタリーさんはそんなふうに、ほーじくんにも敬語だ。
ほーじくんが、祇畏士だからかな。昨日、サーダくんにも敬語で喋っていた気がする。
このひとは、雑役である自分を、なにかにつけ下に置くらしい。なんだか、もやもやする。
ネクゼタリーさんは俺の顔を覗きこむようにした。
「マオさん? お加減がよくないんですか?」
「あ、いえ」
頭を振る。
それから、頭を下げた。「あの、俺、言葉がわからなくなっていて、ネクゼタリーさんに失礼な態度をとりました。いろんなこと、邪推して、ネクゼタリーさんがニニくんに」
「ああ、そんなことは辞めてください」
ネクゼタリーさんの声は凄くいたそうだった。
俺は顔を上げる。
ネクゼタリーさんは実際のところ、痛そうな顔をしていた。ぐっと、苦しそうに唾を嚥む。
「わたしのことは、気にしないでください。わたしが……ハイオスタージャ卿に、彼がいやがるような無理なことを云っていたのは、事実です。彼は心が優しいですから、レットゥーフェル達をあなたからとおざけるのをいやがって、何度もわたしに、あんなことは辞めてほしいと、そう頼んできて……」
ニニくん、そんなこと、云ってくれてたんだ。あの子、タスだけじゃなく、マルジャンやヤラとも親しくしていたし、ヨヨもなついているみたいだし、彼らの気持ちを考えてくれていたのか。
ネクゼタリーさんにしたって、悪気でしていたことじゃない。彼はただ、弟が……恋人をうしなわないように、自分ができる精一杯をした。それだけだ。
「それでも、俺の態度は悪かったです。ごめんなさい」
俺はそう、ネクゼタリーさんに謝った。彼は哀しそうに微笑み、頭を軽く下げる。「わたしこそ、なんの力にもなれませんでした。結局は、主のお力です」
その声には感情らしいものがなにもなかった。




