3896
そう……ツァリアスさんとベッツィさんが、お金を節約する為に井に泊まったようなことを云っていなかったっけ。
有人の井と無人の井では差はあるだろうけれど、井は少しのお金で泊まれるという印象がある。最初、ダストくんの村でナジさん達に宿泊にかかる費用を聴いた時も、おそらくナジさん達が云っていたのは、井や廟のことも含まれてる。安くて、有人なら食事ももらえる。俺の風貌が風貌だから、廟じゃなくて井を想定していたんだろうな。
井に宿泊する場合は、宿賃は無理に支払わなくてもゆるされるんだろう。そういうのは、こちらの世界の好きなところだ。
お湯をティーポットに注いで、俺は玄関へ行き、かめのなかへ貝貨を投げいれた。食事がすんだらお水を大量にくんでいくつもりなので、その代金を先に払っておいた感じだ。
それに、井がきちんと保たれているほうが、俺だって嬉しい。
サンドウィッチやドライフルーツなどを、テーブルへ置いた。もし唐突に襲撃されたら食器を回収できないかも、と思いつつ、フルーツゼリーも人数分並べる。「わ、綺麗!」
「凄く透明ですね、このがらす」
俺は苦笑いで軽く頷く。フルーツゼリーの器は、もとの世界製のがらすだ。こっちに持ってきてよかったかな、と思ったけど、これそのものが兵器や武器にはならないだろうから、多分大丈夫。
もしアウトなら、これを収納空間からだそうとした瞬間に、また天罰をくらっているに違いない。
ほーじくんが、俺が淹れたお茶を配っている。俺は収納空間を閉じる。「ちょっと、出てくるね」
「マオ、どこへいくの」
「マルジャン達にもご飯あげなくちゃだから」
エプロンを外した。ほーじくんはマグを並べ終え、とたとたと俺の側まで来る。「ぼくも、一緒に行く」
「いいよ、ひとりで大丈夫」
ほーじくんは頭を振った。
結局、俺とほーじくんは一緒に外へ出た。リッターくんがお茶をふうふうさましながら、ひらっと俺達に手を振る。カルナさんが、ニニくんにゼリーを食べさせようとしていた。
参道、とでも云うのかな。藪にはさまれたような道を行った。ほーじくんは俺のローブの袖を掴み、羽を少し揺らす。
「あ」
向こうから、ネクゼタリーさんとユラちゃんが歩いてきた。ふたりは、必要以上に距離を置いているように見える。具体的にどれくらいかというと、ユラちゃんがネクゼタリーさんの数歩後ろを歩いている上に、俺から見て右の藪にネクゼタリーさんが、左の藪にユラちゃんが半分くらいぶつかりながら来ている。
感想ありがとうございます。
ネクゼタリーさんが本質的にやばいひとなのはそうです(;´∀`)




