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ほーじくんは目を伏せる。
「あのね。あにさま達は、責める相手がほしかったんだよ。それは、僕が軽率だったからで、あにさま達は悪くないけど、でもマオだって、悪くない。マオは天罰を戴いただけ。それで、理由のことで焦ったのは、あにさま達だから。勿論ぼくだって、悪いけど」
「マオ、この件に関しては、お前の謝罪は必要ないと思う」
リッターくんは考えるみたいに間を置いた。「……実存者の天罰は、めずらしい。普通は証人や、でなくば実存者への誓いを立てた者にくだされる。理由はわからないことがほとんどだ」
なんとなく、仕組みがわかった気がする。
リッターくんは証人や実存者への誓いを立てた者と云っているが、それも伝聞や伝承だろうから、正しいとは限らない。
異世界人が迂闊な話題を喋りそうになった時に、言語:異世界がロックされる。それは間違いない。
そうなるとそのひとは喋れないし、筆談もできなくなるので、そもそも天罰の理由を詳細に伝えることはできない。
で、井のお水で解除したとしても、天罰をくらった異世界人はその理由を説明しないと思う。
説明しようと思ったら異世界のことまで話さないと難しい。異世界では普通の技術だし、こっちでも再現可能だからやろうとしたんだけど、なんか怒られたわ、なんて、云えるか?
もし、仲間内では異世界出身だと理解されているとしても、くわしいことは絶対に云えない。云ったらまた天罰をくらう。
勿論、「ある技術について喋りたかったが、それがだめらしく天罰をもらった」と喋ることはできる。でも、こっちの感覚でそれを聴いたら、「なにかとても不敬なものをつくろうとしていた」くらいの理解になるんじゃないかな。
そうなったら、当人の名誉の為に、天罰の理由はぼかすと思う。後世に伝えようとしないだろう。とにかく実存者の怒りを買ったと、それで事足りる。あやふやな天罰理由について詳細にさぐろうとしたらそっちも天罰をくらう可能性があるし、する訳がない。
俺も、もとの世界では普通のことを喋ろうとしたけれど、だめだった、くらいの説明しかできないなと考えているところだ。そもそも、こわい。どこまでがセーフで、どこからがアウトかがはっきりしないからだ。チキンレースはしたくない。
かりに、天罰をくらったのがこっちの世界のひとだとしたら、メニューを開けないから解除方法がわからない。喋れない、ということだ。
偶然、井のお水を飲んでもとに戻ったとしたら、天罰をくらった直前の話題は一生口にしない。
その結果、「実存者の天罰は理由がよくわからない」になってるのじゃないか。




