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リッターくんが頭を振った。
「理由がわからないからとりのぞけないし、こわい。それは、誰だって持つ感情だろう。ネクゼタリー卿もサーダ卿も、ほーじのことが心配で焦っていたから、わかりやすい理由を求めた。お前の言動に悪いところはない」
「いや、あるよ」苦笑いで云った。「俺の場合、天罰をもらったのは、俺が悪いって、はっきりしてるから」
ふたりは俺を見て、寸の間黙る。
ほーじくんがおずおずと云う。
「あの……レットゥーフェルが云ってた。マオがその……ああ……説明しようとしてたって」
ニニくんが聴いているかもしれないからだろう、ほーじくんは言葉を濁した。
俺は頷く。ほーじくんは溜め息を吐き、リッターくんは小さく頷く。
「やっぱり、レットゥーフェルや、レティアニナの所為じゃなかった」
「ほーじ」リッターくんはほーじくんに目をくれる。「兄達を責めてやるな」
「わかってる。ふたりとも、ぼくがファズダあにさまみたいにならないようにって、そればかりで……サーダあにさまに叩かれたのなんて、はじめてだった」
あれも、ネクゼタリーさんじゃなくてサーダくんだったのか。
それだけ、ファズダさんのことが尾をひいているんだろう。そうか……。
ほーじくんは顔を覆った。
「あにさま、ずっと、レティアニナに、レットゥーフェルと一緒に居ちゃだめだって云ってた。それに、レットゥーフェルがマオからはなれるようにしなくちゃって。レットゥーフェルとも話してた。天罰の理由かもしれないから、はなれててって。魔物達にそういうの、……ネクゼタリーあにさまだって、云いたくなかったと思う。でも、あにさまは、ぼく達を一番にしてるから、ほかのことは全部なしにしてもいいくらいに、ぼく達に……」
ほーじくんはテーブルに突っ伏して、動かなくなってしまった。
リッターくんが俺に頷いて、ニニくんを抱え、食堂を出ていく。お部屋へ行くのだろう。
俺はティーポットやマグを回収し、ほーじくんのせなかを軽く撫でた。ほーじくんはもごもご、云う。
「あにさま、マオの天罰がなくなるように、自分の耳を捧げようとしてた」
「え?」
「違ったけど。実存者の天罰は、耳が聴こえなくなって、声が出なくなるって云われてるから。マオは、ちゃんと聴こえてたし、声も出てた……」
めずらしいらしいから、天罰の内容も誤って伝わってたのか。いや、正しい天罰内容が伝えにくい。言葉が理解できなくなる、というのは。
でも、耳を捧げようとしたって?




