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「雑役?」
リッターくんが、思わず、という調子で声を出す。「彼は、雑役なのか?」
ほーじくんはリッターくんを見て、こっくり頷いた。困った顔になっている。
「リッター、知らなかったの」
「ティヴァイン本家の兄弟が、四人中三人祇畏士であることは、知っていた。だが、次男がなんの職業は知らなかった」
「あ……あの、ネクゼタリーあにさまは、公言してるし、知られても怒らないと思うから、云ったんだけど。でも」
「俺は職業でひとの価値をとやかくする人間にはなりたくない」
リッターくんの言葉は端的で、実にわかりやすい。ほーじくんはほっと、安堵の息を吐く。
雑役……か。ほーじくんが心配していたみたいに、ばかにされる職業だ。すべての行動に上方修正がかかるけど、微々たるもの。万能のもの凄く劣化したヴァージョンみたいに考えられてる。
すべての行動に上方修正って、絶対有利だし絶対つかえると思うのだが、こちらの世界のひと達はあまり評価していない。
たまに比較される「万能」が便利すぎるからだと思う。万能も、すべてに上方修正がかかるけど、行動だけじゃなくパラメータそのものにも上方修正がかかる。しかも、上方修正の割合がかなり大きい。
兄も、弟ふたりも、親も祇畏士で、自分だけが雑役、か。ネクゼタリーさん、つらい思いをしただろうし、今もしているだろう。
リッターくんが感心したみたいに云う。
「ネクゼタリー卿は、戦士か剣戟士のように戦うし、魔法も美しく扱う。それに、還元もできるのでは?」
「ん。巡らせる者は持ってて……でも、適職が、雑役だけだったみたい」
「努力のたまものだな」
リッターくんはふーっと息を吐き、くたっとしているニニくんの体の向きを、少しだけかえた。褥瘡対策だろう。
ほーじくんは机の上で、右手で左手を包むようにする。
「ネクゼタリーあにさまは厳しすぎる。ぼく達、兄弟の為なら、なんだってしてくれて、全部を諦めてきてて。ぼく、マオのこともだけど、そういうふうに、我慢ばっかりのひとが居るの、おかしいと思って、だからお祈りも、ばかみたいに思えて……教わったことも、間違ってるの、多かったし、なんだかなにも信じられない」
最後はしぼりだすようだった。リッターくんはテーブル越しに手を伸ばし、項垂れたほーじくんの肩を軽く叩く。ほーじくんは小さく、ありがとう、と云っていた。
「ネクゼタリー卿はおろそかにされていい人物ではないと思う」
「ありがとう……ぼくも、あにさまはもっと、頑張りに応じたものを手にいれるべきだって思ってる。でも、雑役だと、公は目をかけてくださらないから」




