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リッターくんらしい、率直で飾りけのない言葉だった。俺は寸の間考える。それから頷く。
「俺ができることはするよ。でも、タスは、怒ってないと思う」
「だとしても、俺は謝りたい。彼はハイオスタージャ卿を気にかけていた」
「じゃあ。謝るなら、俺も一緒に謝るけど、いいかな」
リッターくんは口を噤む。
ほーじくんが力なく、テーブルを叩いた。
力はほとんどはいっていなかったが、静かな食堂に音は響いた。俺とリッターくんは、ほーじくんを見る。
彼は項垂れて、肩を震わせ、涙声を出した。「それじゃあネクゼタリーあにさまは、もっと謝らなくちゃ、だよ。レティアニナを、レットゥーフェルからひきはなした。堕落するなんて云って。きちんとまもるって云うから、レットゥーフェルだってレティアニナから離れてたのに、これじゃあ約束をまもってない。そんなの、だめだ」
堕落というやたらに強い言葉が出てきたので、俺はちょっと、かたまっていた。堕落。堕落、ね。こっちの世界でも、そういういいまわし、あるのか。宗教的にだめななにかってことだな。
あ、そっか。便利だし、俺自身つかえるから意識してなかったけど、タスは冒瀆魔法つかえるんだ。それをきらったってこと? でも最初は、ネクゼタリーさん、タスに対してフラットな態度だったよね。
……いや違う。それは、俺が天罰で言葉を封じられたと、ネクゼタリーさんが知る前だ。そっか、そういうことか。
リッターくんがマグを掴み、中身をすする。「ほーじ。ネクゼタリー卿は、きちんと戦っていた」
「レティアニナを放って?」
「彼はお前とサーダ卿をなにより優先しているように思える」
「そうだね」
ほーじくんは顔を上げる。目に涙がたまっていた。「ファズダあにさまもだよ。ネクゼタリーあにさまは、ぼくたちの為にしか動かない。だから、……マオが天罰を戴いたのも、冒瀆魔法をつかう魔物を駆使したからだって、レティアニナがそんなふうにならないようにって……」
わかった。いろいろ、わかった気がする。
説明してもらえばもっとわかるだろう。突然、マルジャン達が隔離されだしたのも、ネクゼタリーさんがニニくんに執拗になにかを迫るような行動をしていたのも、その理由が。
「ねえ」
俺はティーポットをとりだして、ふたりのマグにお茶を追加した。長い話になりそうだからだ。「天罰で、言葉がわからなかった間、どういう話をしてたのか、みんながなんて云ってたのか、教えてもらっていいかな」
ほーじくんもリッターくんも、小さく頷いた。
ニニくんは無表情に目を瞑っている。




