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リッターくんは息を吐き、吸う。
「俺のように、冒瀆魔法をつかう相手と戦い慣れていない人間が居た。だから、お前の動きが鈍った。そう云うことではないのか?」
ほーじくんが答えに詰まる。だから、それはある程度は事実なのだろう。
リッターくんが悪いのじゃない。戦闘が突然だったし、どういう訳だかニニくんがひとり、馬車から出ていたし、レットゥーフェルの数はとても多かった。
そして、俺が言葉を理解できない状態だった。それも、ほーじくんの動揺を大きくしていたと思う。
言葉を理解していない俺が、ほーじくんなりユラちゃんなりの指示を理解できず、レットゥーフェルに狙われる、という情況もありえた。ほーじくんはそういう心配に、戦闘を邪魔されたのだ。俺がタイミング悪く天罰をくらっていた所為で。
リッターくんの云うとおり、ほーじくんはひとりで、レットゥーフェルの群れを封印した実績がある。今日も、混乱していなくて、まもる相手が少なかったら、彼はもっと動けた。俺という突然言葉を理解しなくなったとんでもない重さのお荷物が居なかったら、ということだ。
それは俺も理解できる。だから、リッターくんよりも、圧倒的に俺が迷惑をかけている。
「ごめん」
俺はふたりに頭を下げた。十秒くらいして、姿勢を正す。気持ちが整っていないが、とにかく謝りたい。
「リッターくん。リッターくんの所為じゃないよ。ほーじくんも悪くない。俺、間が悪いから、こんな時に天罰を」
「ちがう」ほーじくんは頭を振る。「マオも、リッターも、悪くない。びっくりしたの、は、レットゥーフェル達が、レティアニナを狙った、から……」
「え?」
リッターくんが片眉をぴくっと動かした。
レットゥーフェルが、ニニくんを狙った。それって、どういうこと?
使役について書いた紙を、リッターくんがとりあげた。と思ったら火がついて、紙は灰になる。
魔王の職業加護がどうのこうのと書いてある紙だ。それが、井で働いているようなひとに見付かったらやばい。多かれ少なかれ、信仰を持っていそうだし、そもそも良識のある人間は魔王関連のあれやこれやはきらう。
あんなもの見付けたら、警邏隊か御山に届け出て、そうなったら俺は伝糸経由手紙を出しまくってたし御山でもお仕事で字を書くことはあったし、筆跡を照合されたらアウトである。贋作家や表象者の所為にしても、魔王関係なら裁定者がでばるかもしれないし、そうなったらおしまい。
なので、リッターくんは実に冷静に正しい判断をしてくれたのだった。




