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俺とほーじくんは並んで座っていた。俺の向かいにはニニくん、ほーじくんの向かいにはリッターくんが居る。
たっぷりのはちみつをとかしたお茶を、マグにいれて、配ってある。ニニくんの前にも置いてあった。呼吸はしているから、香りだけでも楽しんでもらえるように。
「えーと」
俺はマグの底のはちみつを、お匙でぐるぐるする。「どこから話したらいいかな」
またしても地雷を踏みそうだが、ここはまだ井だ。あ、さっきお水汲んどけばよかったな。明日、ここを出発する前に、お水を沢山汲んでおこう。ほんと、俺ってなんでも後手後手だ。
お茶をすする。
「どこまで話したっけ。ごめん、天罰くらって、ちょっと……」
ほーじくんが俺の手を軽く叩いた。「マオ。……レティアニナが、聴いてるかも」
「ああ……」
それは、そうか。ニニくんは意識がないけど、会話が聴こえてるかもしれないし、理解できてるかも。
俺は収納空間から、紙と鉛筆(の芯)をとりだした。本当に、言語:異世界はありがたい。
使役、と書いた。リッターくんが使役について知っているのか、わからないので、簡単な説明もつける。
魔王の職業加護のひとつであること。
いきものを自分の支配下に置き、体力や魔力を譲ったり奪ったりできること。
こちらから解除するのは簡単にできること。
使役について簡単に説明したので、リッターくんとユラちゃんを使役した経緯も書く。
リッターくんとユラちゃんが倒れたのは、おそらくレットゥーフェルの冒瀆魔法の所為。で、俺は悪しき魂持ちで、冒瀆魔法はききにくい。だから、ふたりを使役して、状態異常を奪うことで正気に戻した。
「でも、リッターくんには、あまり、その……」
「俺は、なにが起こったかわからなくて、反応が遅れた」
リッターくんは頭を振る。「折角お前が助けてくれたのに、とっさに動けなかった。だから、ニニが、俺を庇って怪我をした」
リッターくんは項垂れる。しばらくその状態だった。俺はなにも云えないし、ほーじくんも心配そうだけれど黙っている。
リッターくんは頷いて、顔を上げた。
「すまない。……責任は、とる。できることが、どれだけあるのかわからないが、できるだけはする」
「リッター」ほーじくんは声を掠れさせた。「あにさまも云ってたけど、リッターの所為じゃない。レットゥーフェルがあんな数で、突然来るなんて、誰も思わない」
「お前は戦えていた。俺もそうあるべきだった」
リッターくんはマグを両手で包むようにした。




