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回廊を、来た時とは逆方向を通って戻り、社務所の見えるところに辿りついた。先頭はダストくんだから、俺が常識外れなことをして呆れられたりはしない。
言葉がわかるようになったら、みんなが喋っていることが全部頭にはいってきて、うまく調整できていない。今まで字幕なしで海外の映画を見ていたような感じだったのが、突然日本語になったから、どれを聴いたらいいのかわからなくなってしまっているのだ。
喋っているのは、カルナさんとミエラさん、ほーじくんにダストくんだ。俺は黙っていた。まだ、本当にきちんと喋れているのか、自信がない。大丈夫だとは思うけど、不安なのはどうしようもない。
カルナさんとリッターくんが喋っている。
「ロヴィオダーリ卿、レティアニナは、ロヴィオダーリ卿の所為で怪我をしたのではありませんわ」
「いや」
リッターくんは頭を振った。「俺が未熟な為に、あなたの親族を大変な目にあわせてしまった。どのような賠償でもする。彼のことは、俺が責任を持つ」
「ロヴィオダーリ卿」
「リッター」
どこかへ行っていたほーじくんが、戻ってきた。ひょいと、社務所の方向を示す。
「僧坊があった。つかえると思う」
「そうか。そちらへ行こう」
リッターくんはニニくんを背負い、サーダくんが目を覚ましてダストくんの腕からおりた。サーダくんは目をこすって、ダストくんを仰いでいる。ダストくんはサーダくんの頭をぺたぺたした。「めやに、ついてる」
「え?」
「こっち」
ほーじくんの先導で、歩いた。リッターくんはひとひとり背負っているあしどりではない。
社務所の傍の藪のなかに、道があった。
ぱっと見ただけではわからなかったが、多分ここが無人の井だからだろう。日常的に道を歩く、地面を踏みかためるひとが居ないから、草が生い茂ってしまっていて、道が隠れているのだ。
あの回廊や、湖の様子から、それでも定期的に手入れをしているひとは居るんだろうけれど……草ってほんとに、繁殖力が凄いからな。ちょっと草むしりするくらいでは、時期によってはなんの効力もない。偸利や穢土みたいに、根からなんとかできるならまだしも。
ああやっぱ、冒瀆魔法って草むしりに凄く便利だな。
「あれ」
ほーじくんが子どもっぽく云って、前方をゆびさした。リッターくんが頷く。「錠は?」
「なかった」
「それは、助かる」
ダストくんが魔法の灯を飛ばしてくれたので、木のかげでなにがなにやらわからなかったものの全容が見えた。石造りの建物だ。




