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リッターくんにタオルを数本渡し、立ち上がった。リッターくんはニニくんの顔を拭いたり、自分の顔を拭いたりしている。表情はまったくぬけおちていて、動作は機械的だった。
ほーじくん達へ近付いていった。カルナさんとミエラさんが、心配そうにリッターくんの少し後ろに立っている。
俺はほーじくんのローブを軽く掴んだ。「あの?」
「マオ、あんたからも云ってやって」
ユラちゃんが俺を見る。「チャタラ達もホートリットもレットゥーフェルも、まるっきり安全だって。このひと達は、信用しようとしないのよ」
「そういう訳ではありません」
ネクゼタリーさんがかすかに頭を振った。
俺は口を開いたが、閉じる。なんとなく、今までのことがわかりそうな気がしていた。
今まで、不可解だったことが。
ネクゼタリーさんとユラちゃんは、やっぱり平行線らしい。対立さえ起こらない。どちらも理性的に言葉を重ねているが、どちらも意見を翻さない。
「マオの駆使している魔物達は、危険なものではありません」
「ああ、それは。たしかに、彼らはマオさんを助けていますし、頼りになるのは、理解していますとも。危険かそうでないかは別として、彼らが今のところ、マオさんに危害を加えようとしていないのも、わかっていますよ」
「でしたら」
「しかし、魔物は魔物ではありませんか? レフオーブル嬢」
「魔につかれているという意味でしたら、そうですわ」
「それは大きな問題ではありませんか? 魔につかれたものを、井に近寄せるというのは」
ネクゼタリーさんは微笑みで、ユラちゃんは仏頂面だ。「そのような考えは、申し訳ございませんが、理解しがたいですわ」
「あなたはそうなのでしょうが、あのレットゥーフェルはそう考えているのではないでしょうか。彼は自ら、ここからはなれました」
「それこそ、あの者達が安全だという証左では? 井を襲撃する魔物は幾らもあります。あの者達がわきまえていると云うことは、安全だと云うことになります」
「彼らがそのようにしたがっているのですから、わたし達が無理につれてくるのは、彼らの意思を無視した行動ではないでしょうか。彼らはわたし達に気を配って、井から離れているのです。それをこちらの都合でどうこうするのは、わたしはいやです」
ユラちゃんは口を開き、しばらくかたまった。ほーじくんがおずおず、云う。「あにさま、ぼく、ユラの云うことは間違っていないと思う」




