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日が暮れて、危険な時間がやってきた。
夜のほうが危ないというのは事実だった。藪のなかから魔物がとびだしてくるのだ。そいつらは俺達に飛びかかってこようとしている。
そういう魔物には、エクシザが対応してくれた。エクシザがひと睨みするか、軽く吠えると、魔物達は逃げていく。どんなに数が居ても、どんなに大きなものでも、エクシザがこわいらしい。
ただ、なかには、切羽詰まっているのか自信にみちあふれているのか、エクシザ相手でも戦闘をふっかける魔物も、居ないではなかった。瞬殺されて後続が逃げるだけだが。
エクシザは不機嫌そうにぐるぐるっと鳴いて、魔物の死体を藪へ放り込む。食べるつもりはないらしい。
ユラちゃんの魔法の灯や、サーダくんほーじくんの絶佳で視野を確保していた俺は、藪のなかに石畳を見付けた。
そちらへ向かう。「マオ」
ほーじくんが追いかけてきた。腕をとられる。
でも、彼は俺をひっぱったりはしない。頷いて、一緒に歩いてくれる。
あしおとがして、肩越しに後ろを見ると、みんなもついてきていた。
リッターくんがニニくんを背負っている。その傍に、ネクゼタリーさんとタスが居る。
ダストくんはサーダくんの肩に腕を預け、サーダくんはダストくんの腰に腕をまわしている。
カルナさんとミエラさんは手を握り合っている。
ユラちゃんは魔法の灯を俺の前へ飛ばしてくれた。
魔王を先頭にした奇妙な行列は、井の敷地に這入った。
石造りの社務所らしきものはやっぱり、ぴったりと戸が閉てられていて、ひとが居る気配はない。
静かだ。
俺は重たい足をひきずって、回廊に這入る。みんながついてきた。
ほーじくんの光が強くなる。
証人が常駐していなくても、お掃除に来るひとは居るらしい。回廊は清潔に見えた。草に浸食されていたり、葉っぱでまみれていたりはしない。
俺達は黙って歩く。
俺が喋らないのはともかくとして、ほかのみんなも喋らないのはどうしてだろう。
反対側についた。
意識せず、小走りになっていた。俺は回廊から出ると、そちらへ向かう。
本来の意味の井へ。
湖は星明かりを反射していた。
俺はその傍に両膝をつく。両手でお水をすくって、口へ持っていこうとしたが、手が血で汚れているのに気付いた。
手をお水で軽く洗う。お水が湖のなかに戻らないように、少し離れたところに捨てた。気休めだ。
俺は綺麗に見える手で、井のお水をすくい、口へ持っていった。井のお水はやっぱり単なるお水だ。




