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馬車はどうにか、横転状態を脱した。
ただし、車輪がひとつ壊れてしまったらしい。ネクゼタリーさんが座りこみ、疲れた顔で作業している。サーダくんとタスが傍に居て手伝っていた。リッターくんが呆然とした顔で立ち尽くしている。
西の空が赤くなりはじめた。
結局、馬車は人間をのせずに、トゥアフェーノにひかせることになった。
車輪はひとつ欠けたままだが、ネクゼタリーさんとサーダくんが傍について、トゥアフェーノ達に話しかけ、修正しながら歩くので、蛇行してしまうのはなんとかなった。
ニニくんは、まったく無事だったユラちゃん達の馬車に担ぎ込まれ、カルナさんとミエラさんも一緒にのりこんだ。そちらはダストくんが御者をしている。多分、座席に寝かせて居るのだろう。ヤラもシシも、ニニくんにはめいっぱい恢復魔法をかけてくれた。でも、ニニくんは起きない。
マルジャン達の馬車は、タスがトゥアフェーノ達に話しかけ、ひかせていた。タスは機嫌が悪そうで、目がたまにぐるぐるっと動く。
襲ってきたレットゥーフェル達の装備の一部は、俺がひきとった。あの槍はレットゥーフェルにしかつくれないのかもしれない。タスもだけれど、あれで戦うことにこだわっている。タスの為に、かえは幾らかあったほうがいい。
ただ、顔の右半分を覆うかぶとに関しては、タスは還元した。あれは他人のものをつかわないのが普通なのかな。あっちの世界で、群れの仲間を還元した時も、タスは槍と外套を拾って手許に残しただけで、かぶとは還元してしまっていた。
ヨヨとシシが心配そうに、とぼとぼ歩くユラちゃんの近くに居る。ユラちゃんは馬車にのるようにすすめられていたみたいだったが、頭を振って拒んだのだ。彼女は少し遅れつつ、ついてきている。
ヤラは、俺達の間をぴょんぴょんして、怪我人や気分の悪そうな人間が居ないか、さがしているらしかった。
エクシザは、ついっと飛んで先のほうへ降りて俺達を待ち、俺達が追いつくとまたついっと飛んでいく。
俺はほーじくんと手をつないで歩いている。
ふたりとも血まみれだし、汗もひどかった。とにかく、少しでも安全なところに行って、服をかえたい。さっきあったことを忘れたい。
ニニくんが刺された光景が目に焼き付いている。
様子が深刻なのはリッターくんだ。彼は項垂れ、せなかをまるめ、あしをひきずるようにして歩いている。ヤラが度々、燕息をかけるのだが、気分がよくなったふうではない。




