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リッターくんはよろよろ立ち上がって、ニニくんへと歩んでいった。カルナさんとミエラさんが、ほっとしたらしい声を出す。ネクゼタリーさんが少しだけ口許をゆるめた。その顎から血が滴る。
リッターくんはそっと、ニニくんの傍に片膝をつく。ニニくんを怯えさせたくないのか、もそもそとなにか云う。リッターくんはまだ、涙を流している。
ニニくんは反応しない。動くこともない。彼はまだ気を失っている。
体力を譲っても、状態異常をもらっても、どうしようもなかった。
もしかして、俺が使役していることが悪影響なのではないだろうか、と思って、使役を解いた。
使役を今まで、継続的につかっていた人間は、ほーじくんだけだ。ほーじくんは善なる魂持ちで、祇畏士である。魔王のスキルに対してなにか、耐性のようなものがある、という可能性は、あるだろう。そのおかげで、俺に長期間使役されても平気なのかもしれない。
かつての魔王達の記録に拠れば、魔王シンパは魔王の為なら親とでもきょうだいとでも平気で対立し、戦った。それが使役によるものなのは多分間違いない。そこまで行動を操れるのなら、なにかがおかしくなって目を覚まさないなんてことも、ありうるのじゃないか。
けれど、ニニくんは目を覚まさなかった。時折小さく呻くだけだ。
リッターくんは咽をしめられるような声を出した後、完全に声を失った。
ネクゼタリーさんが剣を捨てる。剣は石畳にぶつかって重たい音をたてる。彼は疲れた様子で、横倒しの馬車へと歩いていく。
タスとほーじくん、サーダくんも続いた。四人で馬車をおし、もとに戻そうとしている。ダストくんが、トゥアフェーノ達の縄を外してあげていた。馬車につながっていたら重たいし、馬車の動きで怪我をしそうだ。それに、どちらにせよ一旦解いてつなぎなおさないと、トゥアフェーノ達は逃亡を図ったようで、絡まってしまっている。
四人がかりでおしても、馬車はうまくもとに戻らない。
ユラちゃんもそちらへ行って、魔法で加勢した。馬車を壊さない程度の風の魔法をあてている。
カルナさんとミエラさんが、リッターくんになにか云いながら立った。ふたりも馬車を起こすのを手伝いに行く。馬車が少しだけ動いた。本当なら、みんなで力を合わせたらこれくらい簡単なのだ。でもみんな、疲れている。レットゥーフェルと戦ったから。
俺は息を整えて、ニニくんの傍へと歩いた。リッターくんは正座で、涙を拭いもせず、じっとニニくんを見ている。
じっと。




