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傍らに座っているほーじくんを見た。誰かが喋ってくれないと、わからない。少なくとも変な効果音があったりエフェクトがかかったりはなかった。
ニニくんが呻いた。「レティアニナ、大丈夫?」
カルナさんの声だ。
今の、わかった。
ききとれた。
「ああ、よかった」
溜め息まじりにそう云ってしまった。ほーじくんがほっとした顔をする。「マオ」
「うん。ごめん、あの」
ほーじくんが抱き付いてきたので、俺はバランスを崩して後ろに倒れた。危うく湖に落ちるところだ。
でも、ほーじくんを咎める気にはなれない。彼はすすり泣いていて、よかった、よかった、と小さく云う。
ユラちゃんがつかつかやってきて、大きく息を吐いた。
「マオ、あんたね」
彼女は目をぎゅっと瞑り、開く。頭を振る。疲れた表情だ。「いえ、もういいわ。とにかく、よかったわね」
「うん」
「実存者の天罰なんて、実際に目にしたのははじめてよ……」
あ、これって実存者の天罰なんだ。
ユラちゃんはぶつぶつ云いながら、しゃがみこんで井のお水で手を洗い始めた。その後、お水を飲む。
リッターくんがニニくんを背負ったままやってきて、ニニくんを湖のすぐ傍に横たえた。
リッターくんは、俺の言葉がまともになったことについて、なにも云わず、泣き腫らした顔を湖のお水で洗った。顔を洗ったお水が戻らないように、お水をすくった後、体の向きを少しかえて、洗っている。
それを終えると、リッターくんはニニくんの手や、顔を、井のお水でぬらすようにして、手巾で拭う。なにか、宗教的な匂いのある行動だ。
ネクゼタリーさんとサーダくんが、とぼとぼとやってきた。「マオさん」
サーダくんが咽を詰まらせた。
ほーじくんが目をこすりながら体を起こし、俺のこともひっぱって起こしてくれた。彼は兄を示し、もそもそと云う。
「マオ。ぼくの、二番目のお兄さんの、ネクゼタリーあにさま」
「マオさん、話すのははじめてですね」
ネクゼタリーさんは微笑んでいたが、それが心の底からのものではないのはよくわかった。
俺は頷く。
「はい。マオです。宜しくお願いします」
「こちらこそ。わたしはネクゼタリーです。弟が世話になっています」
「いえ……」
俺は頭を振る。お世話になっているのはこちらである。ほーじくんには助けられてきた。恩寵魔法でも、それ以外でも。
サーダくんが喘ぎ、目許を手の甲で拭った。「もっとはやくに、実存者が怒りをしずめてくださったらよかったのに」




