3850
まちの中心部にある宿は、やっぱり厩舎が充実していて、馬車を管理するひとがちゃんと存在していた。ダストくんが姿を見せるととんできて、ぺこぺこしている。何度も村とレントを行き来しているダストくんは、顔を覚えられているらしい。
ダストくん、これからも行商があるのに、ここの門衛にたてつくような真似して大丈夫なのかな。あ、だから、祇畏士であるほーじくんが代行したんだろうか。この子達、頭がまわる。俺には真似できない。
ダストくんは馬車係であろうひとに、なにか説明しながら、トゥアフェーノ達を撫でてまわった。一頭々々、性質が違うから、その説明だろう。還元過多による魔物の襲撃で怯えてもいるようだし。
ダストくんとちょっと話し込んでから、係のひとが、ユラちゃん達の馬車を移動させた。御者台にのって、トゥアフェーノ達をなだめて歩かせている。
ダストくんはそれを見送って、マルジャン達の馬車の扉を開け、なかへなにか云った
ちょっと間があって、ヨヨがおりてくる。例の、くたびれた様子のニーバグも、一緒だ。可愛らしく手をつないで、ヨヨはにこにこ、名前のわからないニーバグはめそめそしている。
ヨヨがしきりと頭を撫でてあげたり、頬をむにむにしたりしているので、なぐさめよう、はげまそう、としているのかな。でも、ニーバグはたまに、ぽろっと涙をこぼした。なさけない顔で、ヨヨに頬をすりつけたり、ヨヨの耳をかじったりしている。ヨヨがいやがらないので、ニーバグ的には耳をかじる行為は普通にゆるされることなのだろうか。それとも、この子達が特別親しいのかな。
ユラちゃんがそちらへ行く。ヨヨがはっとして、ニーバグをぎゅっと抱きしめた。ユラちゃんの不満そうな顔。
ユラちゃんはふんと鼻を鳴らし、肩をいからせて宿へ這入っていった。リッターくんが無表情にそれを追う。サーダくんが苦笑いで、ヨヨ達に近付き、しゃがみこんで目の高さを合わせた。なにか話しかけている。
ニーバグは人間の言葉を喋れないみたいだが、こちらの云うことをそこそこ理解はしている。サーダくんの言葉にヨヨは大きく、体全体をつかうような頷きを返した。それから、隣のニーバグをぎゅーっとしめあげる。ニーバグがぶえっみたいな呻きをあげた。
ヨヨはぱっと腕を解いて、ぺたぺたとニーバグを撫でる。
「しし」
ニーバグが頷いた。「しし」
えーっと、シシって云うのか、あの子。やっぱりヨヨの知り合いなのかなあ。もしかして、同じ群れのニーバグ? それはないか。




