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そのニーバグの服は随分汚れていた。
ニーバグは、人間のつくったらしいチュニックやなにかを着ていることが多いのだが、俺が見たことのあるニーバグは、もうちょっと綺麗な服を着ていたものだ。ヨヨもだし、猫の爪採りに行った時いきあったニーバグ達もそうである。
勿論、魔物屋(っていうのかな? 駆使魔法で魔物を捕まえて、売っているひと達)の扱っているニーバグは、もっと綺麗で清潔な格好をしている。ちゃんとお洗濯してるなっていう服を着てるってこと。だから、ヨヨが特別清潔だったということじゃない。
でも、このニーバグは、言葉は悪いんだけどうす汚れている。なんとなくすすけているし、かぎ裂きやなにかも散見された。まだしめっている泥がついてるのは、朝方降っていた雨の所為かもしれない。
ニーバグはめそめそしながら、またみいみいと鳴いた。なさけない、憐れを誘う声だ。
ユラちゃんが俺を仰ぎ、身振りをする。その意味はわからなかったが、お菓子を出すと、彼女は頷いてそれをひったくり、ニーバグへ持っていく。ユラちゃん、ニーバグが好きなんだ。
ユラちゃんがダストくんの近くにしゃがみこんだ。ニーバグへ向けてお菓子をさしだしている。ニーバグは涙ぐんでいたが、嬉しそうに目を細くして、ユラちゃんの手からお菓子をとった。ユラちゃんは頬杖して、嬉しそうににこにこしながら、ニーバグがお菓子を食べるのを見ている。
ニーバグはおなかがすいていたらしい。掌サイズの栗のタルトを、三口で食べた。俺もそちらへ近付いていって、ビスケットの袋をさしだす。ニーバグはダストくんに頭突きみたいな動きをして、喜びを表現した。ダストくんが苦笑いになっている。
かたん、と音がして、俺はそちらを振り返った。マルジャン達の馬車だ。扉が開いている。
ニーバグが文字通りとびあがって、そちらへ走っていった。
ニーバグはステップをはねとんであがり、馬車のなかへつっこんだ。ユラちゃんがなにか云いながらそちらへ走る。俺はダストくんと顔を見合わせた。お互い、首を傾げる。
リッターくんとほーじくんも似たような状態になっている。リッターくんがほーじくんを促し、ふたりでマルジャン達の馬車へ歩いていった。
みみー、みいー、と、ニーバグの鳴く声がする。俺も、そちらへ向かった。ダストくんも立ち上がって、ついてくる。
ステップに立ったユラちゃんが振り向いて、困惑気味に声を出した。ほーじくんが応じるが、こちらも困惑した様子だ。
更に近付くと、ユラちゃんの困惑の理由がわかった。やつれたニーバグが、ヨヨに抱き付いて泣いている。




