3842
恩寵魔法をつかえるひとなしで荒れ地へ行くなんて、魔王の俺もごめんである。そんなん絶対いやだわ。だって荒れ地の魔物強いもん。
俺は魔物に対する特効があるからまだましだが、普通の職業のひと達にはそれもない。その状態で、でっかいヴェルツに会ったらなんて、考えたくもない。悪しき魂じゃないから、あの変なパッシヴ効果うけるんだろうし。見てるだけでも叫喚かけられたみたいな状態になるっていうやつ。
なのに、戦士だとか魔導戦士だとか、ありふれた職業のひと達が、パーティ組んで荒れ地でレベル上げしているのである。こっちの世界のひと達の根性ってどうなってんのってたまに思う。
まあなあ。魔物が居て、普通に魔物にひとが殺される社会だもんな。それに対抗する為には、強くなるしかないのか。
それはわかるけれど、でもその為に、努力したくてもできないような職業、特殊能力のひと達が、かなり厳しく差別されているのだと思う。無理なものは無理だし、できないものはできないというのに。
結局、娼妓だの魔王だの、差別されそうな職業をつくった神さまに腹がたつし、まったくもって予定調和に差別をしている人間達にも嫌気がさす。
馬車が停まった。俺は眠っていたみたいで、はっとして目を開く。なにか、くだらないことを考えていた気がする。
ユラちゃんが馬車から出ていった。カルナさんとミエラさんは、まだ眠っている。もしかしたら、昨夜ニニくんが廟につれていかれたし、その不安で眠れなかったのかもしれない。俺はそういうことに気付くのが遅い。
立ち上がり、扉を開いて外を見た。ユラちゃんがリッターくんと喋っている。ああ、リッターくん、今までどこに居たんだろう。合流したんだ。
左から、ほーじくんが小走りにやってきた。三人でなにか喋ってる。そこに、ゆっくりと、ネクゼタリーさんが歩いてきた。ネクゼタリーさんらしくなく、表情はかたくて、怒っている様子だ。
らしくない、かあ。ネクゼタリーさんのことなんて、ほとんどなにも知らないのに。
ほーじくんがネクゼタリーさんのローブをひっぱり、心配そうに話しかける。ネクゼタリーさんはぎこちなく微笑んで、頭を振った。ユラちゃんになにか云うと、彼女は二度、深く頷く。
ネクゼタリーさんは居なくなり、ユラちゃんが戻ってきた。俺は席に戻り、ユラちゃんも座って、馬車がまた動く。
ニニくん、大丈夫かな。もしかしたら、あのまま廟に預けられているのかもしれない。




