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あまりいい気分ではない。
俺は椅子に座ったまま、多分偉いひと達と、従業員との会話を、聴いていた。聴いたって理解できもしないくせに。
二分くらいすると、従業員がカルナさん達を示した。カルナさん達は、相変わらず、汚れたタオルを回収したり、疲れているらしいひとに肩をかしてあげたり、くるくると働いている。
偉いひとが数人、従業員に頷いて、カルナさん達のもとへ歩いていった。話しかけると、カルナさん達はびくつく。当然だ。彼女達は、不当に死刑に処されそうになった。いや、処された。たまたま助かったというだけで。
俺は椅子の上で膝を抱え、顔を埋めている。眠っていたかった。なにもかもほうりだして。
全部なかったことにして。
肩を叩かれ、顔を上げる。疲れた様子のサーダくんだった。
彼はなにか云うのだけれど、俺は理解できない。でも、手首を掴まれたので、椅子から立った。多分、移動するのだ。もう出発するのかもしれない。
ユラちゃんが、偉いひとのひとりと喋っている。残りのひと達は代表者の少し後ろに居て、頷いたりお辞儀したりしている。
ふんぞり返って、ユラちゃんのほうがずっと偉そうだ。彼女のその様子に安堵する。ユラちゃんはいつだって、かわらない。俺に対してだって、理由がなければ態度をかえない。彼女は筋が通っているひとなのだ。
サーダくんに手をひかれて歩き、ユラちゃん達に近寄っていく。ユラちゃんは鷹揚に手を振り、偉いひと達がぺこぺこした。ユラちゃんの甲高い声で、なんとなく安心する。
カルナさんとミエラさんは居なかった。どこかへ行ったのだろう。
そういえば、ダストくんはどこに居るのかな。姿を見ていない。怯えたトゥアフェーノ達を、宥めているのかもしれない。
言葉ってほんとに大事だな。なんにもわかりやしない。
ユラちゃんが偉いひと達からお礼を云われているらしいことはわかった。そのあと、ユラちゃんが俺を示したので、偉いひと達は俺にもお礼を云っているようだ。俺は微笑んでなにも云わないし、なにもしない。頷くのも頭を振るのもいやだった。
偉いひと達はユラちゃんになにか云い、ぺこぺこしながら出ていった。ユラちゃんは腕を組んで胸をはり、ふんっと満足そうに鼻を鳴らす。また、魔法で大暴れしたんだろうか。レントで還元過多があった時よりも、彼女は魔法のコントロールがよくなっているから、多分町に被害が出ているなんてことはないと思うけれど。だって、ラプラタナ地域にある魔法学校で、魔法の制御について、相当勉強してるんだしね。




