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音をたてて、上空からクロイダイドが落ちてくる。エクシザが高いところから落としたらしい。
エクシザは戻ってくると、まだ生きているクロイダイドを、勢いのまま踏みつけた。蹴爪がクロイダイドにくいこみ、タイアの空気がぬけるような音をさせて、クロイダイドは動かなくなる。
タスが槍を軽く振った。槍に付着した、クロイダイドの体液や血を、払い落とそうとしているらしい。
エクシザがすばやく蹴ると、クロイダイド達はすぐに倒れてしまう。最後の二頭は、怯えた様子で走って逃げていった。大怪我をした傭兵の治療で、包囲が崩れていたので、そこから逃げたのだ。不格好ながらかなり走った後で、ばっととびあがり、どこかへ飛んでいく。
エクシザはそれを一瞬、追いかけようとする。だが、不満そうだったけれど、結局それ以上追いかけはせず、どすどすと俺のもとへ戻ってきた。タスも、ゆっくり歩いて、戻る。
エクシザは俺の隣でまるくなり、鼻を鳴らすみたいにした。霧雨に、羽が濡れているが、きちんと羽繕いしているらしく雨がしみこんでいる様子はない。こんなところで雨に濡れるのはいやだろうに、エクシザは俺の傍から動かない。
タスは俺の目の前で停まった。疲れたように、肩をすくめている。俺はエクシザ、タスと、順繰りに顔を見て、頷いた。ありがとうと、小さく云った。
ふたりは理解したふうではなかったが、それでいい。
傭兵達が、こちらを見てこそこそ喋っている。不審そうな顔、戸惑った顔、安堵した顔、いろいろだ。勿論、エクシザに対して敵意のある目を向けているひとも居る。それどころか、剣を向けているひとも。
カルナさんとミエラさんが走ってきた。傭兵らしい、四十手前くらいの男性も、一緒に来る。贅沢な銀の髪飾りに、揺れるガーネットのピアスをつけ、こちらの世界基準だと男ぶりは素晴らしい。
男性はどうも、俺に対して、お礼を云ってくれているらしい。何度も頭を下げてくるので、そうだと思う。カルナさんがタスに喋りかけ、タスが数回頷いて、肩越しにどこかを指さす。カルナさんがそれに頷く。
ミエラさんは、傭兵ふうの男性になにか云っている。マオ、と聴こえたので、俺のことを紹介してくれたようだ。男性はまた、ぺこぺこと頭を下げる。
俺は頭を振って、収納空間から魔力薬の包みをとりだし、彼へさしだした。戸惑い顔の男性の手に、包みをしっかり握らせる。ちょっと時間はかかったが、最後には彼は嬉しそうに、それを押し戴く。
霧雨が濃くなっていく。もっと強い雨が降るかもしれない。




