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勿論、くちばしと腕がつながっていて、動きが制限されるのは、クロイダイドも一緒だ。くちばしという攻撃手段を封じられてもいる。だから、蹴爪で攻撃している。
だが、腕を刺し貫かれて出血している傭兵は、もう片方の腕で反撃することが難しい。おまけに、太腿からも出血していて、腕にしても太腿にしても出血が停まらない。その上、カルナさんや別の傭兵が、そのクロイダイドへ攻撃しようとすると、クロイダイドはくるくると体の向きをかえ、腕を貫かれた傭兵を盾にする。傭兵達の攻撃が通らない。
クロイダイドに捕まっている傭兵は、どんどん顔色が悪くなっていった。肌が白っぽくなっている。このままでは、出血多量で死んでしまう。
心臓がどきどきしている。口がわななく。
俺は呆然としたまま、ほとんど考えもせずにエクシザとタスを呼んだ。
エクシザは馬車にとじこめられた状態が続いて、よほど不満がたまっていたのだろう。俺の頭上に出現するや、嬉しそうに高い叫び声を上げて、クロイダイドへ向けて滑るように飛んでいった。爪でクロイダイドを一発蹴った後、わしづかみにし、上昇する。クロイダイドは驚いたのか、傭兵の腕からそのくちばしがするっとぬけた。
傭兵が倒れる。その辺りには、彼の血がたまっていた。
防具を着けていないひとがふたり、駈け寄って、治療をはじめる。よかった、恢復魔法つかえるひと、居るんだ。
タスはタスで、どうにも不満げだった。ぶっと鼻を鳴らし、大股にクロイダイド達へ向かって歩いていく。
傭兵達がタスに対して警戒するそぶりを見せたが、カルナさんとミエラさんが説明してくれたらしく、困惑気味だが誰もタスを攻撃しなかった。
タスが槍で、クロイダイドをさっくり突き刺した。動きがはやすぎてなにが起こったかわからないが、俺が目をはなしている間にタスの槍がクロイダイドに刺さっていたのだ。
クロイダイド達も、どうしてホートリットとレットゥーフェルが居るのか、そしてそのふたりが自分達と敵対しているのか、訳がわからないのだろう。動揺したみたいで、タスから距離をとる。刺されたクロイダイドは、タスが槍をさっと払うようにすると、その場に倒れて動かなくなった。
タスが口のなかでもごもご云い、クロイダイドが一頭、けたたましい声をたてて倒れた。偸利をつかったのかな。
俺も、偸利をつかって、一頭倒した。タスがちらっとこちらを見、俺は頷く。タスは無表情に、クロイダイドへ向き直り、そこからごく単純な駆除作業がはじまった。




