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いや、それだとおかしいか。サキくんの名前を最初に出したのはほーじくんだ。ほーじくんが……あ。
伝糸は、つかえなくても、うけとることはできる。ほーじくんが、俺と一緒に居る時に、どこからか連絡をうけていた、ということは、ありえないとまではいえない。
それに、ほーじくんとはずっと一緒だった訳じゃない。馬車は別だったし、ニニくんとふたりで馬車に揺られた時間もあった。市場をめぐってここへ来たあとも、ほーじくんはリッターくんダストくんとの会話に加わって、俺はしばらくお部屋でひとりだった。
その時に、ミューくん達のことを聴いたのかもしれないし、それ以外のタイミングで、祇畏士協会や、そんなものがあると仮定しての話だけれどその下部組織から、伝糸で連絡があったのかもしれない。
椅子から転げ落ちそうになった。頭のなかでなにかの声がする。
これ……サーダくんだ。
ほーじくんとユラちゃんが席を立ち、出ていった。その途中、ユラちゃんがカルナさんになにか頼んだらしく、カルナさんが頷いて俺の隣の席へ移動する。マオが居なくならないか見張っていて、と云われたのかな。
カルナさんが耳に手をあてて、顔をしかめた。サーダくんから連絡が来ているのだろう。
伝糸はめずらしい能力じゃないと聴いているけれど、そうとも云えないのじゃないかと感じている。だって、俺の知り合いには、伝糸持ちはあんまり居ない。俺自身も伝糸持ちじゃない。伝糸があったら便利だったなと思う場面は多々あった。
サーダくんが焦っていて、俺達みんなに連絡をばらまいてしまったのかもしれなかった。言葉を理解できていない俺にも連絡をとろうとするくらいに。
なにか焦るようなことが起こっている、ということだ。
サーダくんとネクゼタリーさんはここに居ないから、廟に居るのは間違いない。勿論そこにはニニくんが居る。
そわそわして、落ち着かない。どうしたらいいのかわからない。
俺も伝糸をつかえたら連絡できるのにな、と思った。今は言葉がわからないから無駄だけど。
もしかしたら、ニニくんのことではないかもしれない。
そう思ったのは、外が慌ただしくなったからだ。怯えたひと達が駈け込んでくる。かわりに傭兵達が出ていった。
ミエラさんが焦った表情で、外へ出る。カルナさんが、ミエラ、と云って、追いかける。俺もふたりのあとを追った。
外の通りには悲鳴や怒号が響いていた。武装したひと達が沢山居る。傭兵らしきひとも、そうでないひとも。
それから、魔物が居た。還元過多による襲撃だと、それで気付いた。




