3828
俺の心配や不安をよそに、入山者組三人は、食事をしながら喋っている。リッターくんもユラちゃんも喋っていた。シアイル式のテーブルマナーからすると考えられない無作法である。ふたりはしかし、それを気にしてはいないらしかった。ほーじくんがお祈りをしないのに、似たものを感じる。
三人の会話には、ミュー、という言葉が、数回出てきた。それが、ミューくんのことなのか、なにか別の単語なのか、わからない。でも、今までそういうふうにミューという言葉が何度もはいった会話を聴いたことがないので、ミューくんのことだと思う。
なんとなく、耳が慣れてきたのかな。語順的にも、抑揚のつけかたなんかでも、人名だと思うのだ。
更に、補強材料が出てきた。ほーじくんが、サキ、と云ったのだ。
ミューくんとサキくんのことを喋っている、のか。ほーじくんが「サキ」と云ってしばらく後、リッターくんがかすかに眉を寄せ、ユラちゃんが怒ったような顔をして厳しい声を出した。ユラちゃんの声に、テーブルの隅っこでご飯を食べているカルナさん達が、びくっと肩を震わせる。
腰をうかし、顔をうっすら赤くしたユラちゃんに対して、ほーじくんは冷静に喋る。ユラちゃんの顔色は徐々に、もとに戻っていったが、表情は不満そうだった。
リッターくんが軽く片手をあげ、発言する。ほーじくんが頷いた。ユラちゃんが短く言葉を発すると、リッターくんは席を立ち、食堂を出ていく。いつの間にかリッターくんのお皿はからになっていた。
ミューくんと、サキくんに、なにかあったんだろうか。
こちらの世界には、電話はない。でも、伝糸がある。もし、ユラちゃんやリッターくんが、それぞれのお家の情報網みたいなものをつかって、ミューくんやサキくんのことを報せてもらえるようにしていたら、ここでだってその情報をうけとることはできる。
郵便局みたいなところは、あると思う。ダストくんだってたまにお手紙をくれていた。ダストくんの村には、協会の支部はないみたいだったけれど、ここにはあるのかもしれない。
俺とほーじくんが離脱していた間に、ふたりのどちらかが、傭兵協会でも商人協会でも、とにかくその支部へ行って、自分宛の手紙がないか、照会したのかもしれない。昨日、門衛ともめた一件以来、今朝までリッターくんを見ていなかったから、リッターくんがそういうことをしていた可能性はある。
それで、ミューくんとサキくんのことを、なにか聴いたんだろうか。
ふたりになにか?
感想ありがとうございます。はげみになります。




