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お手洗いから戻ると、ほーじくんはお部屋の扉にせなかをつけて立っていて、下をゆびさした。手をつないで、一階へおりる。
ほーじくんは洗いすぎて生地がうすくなったローブを着ている。祇畏士の証のローブなのに、どうしてあたらしいものを着ていないんだろう。ほーじくんは、祇畏士になったばかりだ。協会から支給されたりしないのだろうか?
そんなことに今気付くのだから、俺は相当まがぬけている。
食堂には、リッターくんユラちゃん、カルナさんミエラさんが居た。ほーじくんが席に着きながら、ダストくんの名前を口にする。ダストくんがどこに居るのか訊いたんだろう。ユラちゃんが、トゥアフェーノ、と云っていたから、トゥアフェーノに朝ご飯をあげているか、トゥアフェーノの防寒対策をしているか、どちらかだ。
マルジャン達はどうしているんだろう。ご飯、食べられたのかな。
自分のことで手一杯で、使役しているのにマルジャン達に対してきちんと責任をとっていない気がする。ちゃんと気を配っていないといけない。彼らを使役している以上、俺には責任というものがある。
朝ご飯が運ばれてきた。フーフーと、濁った赤のシチュー、生のマンゴーとアボカド、むしたプランテーンだ。
シチューには多分、山羊肉がはいっている。ここって、朝ご飯出してくれたんだったっけ。普通出してくれないとしても、お金を払えば食べられるのかな。四月の雨亭も、宿兼食堂だし。
以前、ここへ来た時のことが、本当に凄く昔に思える。記憶があやふやだ。でも、二年くらいで潰れていないから、人気宿なのだろうな。
入山者組で会話が続いていたが、俺はそれをあまり聴いていなかった。だって、耳を傾けても、ちゃんと理解できないのだ。自然と聴き流してしまう。
フーフーをお匙でほじくっていると、ユラちゃんが、ミュー、と云った。
ばっと、顔を上げ、ユラちゃんを見る。俺の斜向かいに座っているユラちゃんは、びくっとした。もごもご云っているのは、なによ? とか、どうしたのよ? とか、そういう言葉だろう。
俺はお匙を置いた。口を開くが、結局やめる。頭を振って、もう一度お匙を掴む。向かいのリッターくんが、かすかに顔をしかめた。
ユラちゃんは、訳がわからない、という顔だったが、俺をちらちら伺いながら、リッターくんかほーじくんへ向けて喋る。
やっぱりだ。
ミュー、と聴こえる。これって、ミューくんのことじゃないかな。
ミューくんがどうかしたんだろうか?




