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服をかえていると、ノックの音があった。扉を開けると、ほーじくんが立っている。彼はもじもじしていたが、ちょっと項垂れて這入ってきた。羽がしょぼんとしている。
ほーじくん用のきがえをとりだして、ベッドへ並べる。ほーじくんはくっついて置いてあるベッドを見て、動揺したらしい。袖をひっぱってきがえを示すが、彼の目は泳いでいる。
俺は一旦、お部屋を出て、お手洗いへ行った。
戻ると、ほーじくんはベッドにもぐりこんで、頭まで毛布を被っている。眠っていないだろう、というのが、気配でわかった。
俺はほーじくんのベッドに上がる。ほーじくんはびくっとしたけれど、俺が隣に横になると、軽く抱き寄せてくれる。
それだけでも安心できた。
ただ、手が触れる距離に居るというだけで。
こちらへ戻って十二日目。ほーじくんが動くので、目が覚めた。彼はぼんやりした顔で、目をこすりながら出ていく。お手洗いへ行ったんだろう。
上体を起こして、ちょっと息を整える。うっすら眩暈のようなものがあったが、次第におさまった。マルジャン達に魔力を譲渡……っと。
ベッドをおりて、窓を開けた。湿気が顔に吹きつける。外は霧雨だった。空がうっすら灰色の雲で覆われている。この感じだと、雨はもっと酷くなるかもしれない。
欠伸をして、道がぬかるんでいたら移動が面倒だろうな、トゥアフェーノ達は体がひえるだろうな、と思う。そういうのの対処って、なにかあるんだろうか。
歯を磨いて、顔を洗った。お水を外へ捨てていると、ほーじくんが戻り、いれかわりで俺がお手洗いへ行く。
ハーバラムさんが定宿にしているだけあって、ここは人気らしい。廊下には、商人ふうの格好のひと、傭兵っぽい格好のひと、複数人が居た。話し合っているふうなのも多いので、今日はどこへ行こうとか、どの魔物を狩ろうとか、話しているのかもしれなかった。
傭兵パーティのひとりが、俺を見ておっという顔をし、なにか話しかけてくる。でも、別のひとが腕を掴んでなにかささやくと、彼はばつの悪そうな顔をして、俺にぺこぺことお辞儀した。娼妓と間違えられたのかな。それで別のひとが、こいつは祇畏士さまと一緒に居た、と云ったのだ。多分。
俺はどうしようもないので、曖昧に微笑んでおいた。彼らはほっとしたみたいに見えたので、もしかしたら、祇畏士と恋人関係にあるひとになにかしたら、捕まったりするのかもしれないな、と思う。
そうでなくても、主の恩寵である祇畏士にたてつくような真似をしたら、ばちがあたると思っているのかもしれない。




