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揚げパン、カラフルな飴、山羊や羊の串焼きなど、お皿にのっていないものを買い込んだ。スープのお椀やお匙は後から返すみたいなのだけれど、串焼きの串や揚げパンの包み紙は返さなくていい。
次々収納していくので、屋台のひとは目をまるくしたり、気味が悪そうにしたりする。でも、ほーじくんとふたりづれなので、最後には納得した様子になるのがほとんどだ。要するに、行へついてくるくらいだから希有な収納空間の持ち主なのだ、と思われている。
氷や熱湯も買った。広場を離れる頃、売りものを見せていたのは、多分駆使魔法が得意なひとだ。ニーバグを数匹つれて、口上を述べていた。ニーバグ達は嬉しそうに、その周囲を踊りながらまわっている。彼らは本当に、人間が好きらしい。
ほーじくんと手をつないで歩く。ほーじくんはまた、あの平坦な調子の歌を口ずさんでいる。もしかしたら歌ではなく、お祈りかもしれない。
彼はあいている手を空へ向け、月へかざした。俺も、真似をする。その動作の意味はわからない。わからないけれど、同じ動作をしたら、気持ちも近付くような錯覚があった。
ほーじくんがユラちゃんに怒鳴られている。
宿の前庭だ。ユラちゃんはいらいらした様子で腕を組んで、せかせか歩きまわっていたのだが、俺達に気付くと猛烈な勢いで走ってきて、ほーじくんをおすようにして叩き、怒鳴った。
ほーじくんは細かく頷き、なにか返す。
しばらくすると、ユラちゃんは息を整え、ぷいと顔を背けた。俺はその手に、飴を握らせる。ユラちゃんはむっとしていたが、結局は飴を口へ含んだ。
三人で建物へ向かって歩く。ユラちゃんとほーじくんが静かに喋っている。
多分、ダストくんがすすめたのかな。ハーバラムさん御用達のお宿だ。俺は建物を仰ぐ。市場からそんなに離れていないし、香りが届いてもおかしくはない。ここには、つかいにくい井戸があったっけ。
建物に這入ると、リッターくんとダストくんが立ち話していた。ふたり揃ってこちらへ気付き、ダストくんがとことこやってくる。ダストくんはほーじくんと会話をはじめ、俺はユラちゃんにひっぱられて二階へ移動した。リッターくんはひとりで外へ出ていく。馬車の見張りに行くのかもしれない。
お部屋は前と同じだった。ユラちゃんは俺を、両手でそこへおしこむと、ほーじくんのことを云う。ほーじくんと同室だ、という意味かな。
ユラちゃんが居なくなり、俺は歯を磨いて、顔を洗った。
感想ありがとうございます。ティヴァイン家は清貧すぎてマオは世の不公平を嘆いているようです。




