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みんなは心配しているかもしれない。そう考えなかった訳じゃない。
俺とほーじくんは、魔法の灯や、屋台の軒につるされたランタンで仄明るい通りを、腕を組んでゆっくり歩いていた。灯が沢山あって、その向こうには星空が見える。今夜は半月だった。
ほーじくんは羽があるし、ローブで祇畏士だとわかる。夜市のような屋台を楽しんでいるひと達は、ほーじくんが通りかかるとありがたそうに頭を垂れたり、握手を求めたりしていた。ほーじくんはそれに、にこやかに応じている。
揚げパンの屋台を見付けたので、ひと盛り買った。わら半紙のような紙の包みで渡され、エスターを払う。屋台のおじさんは俺に、にっこり笑ってなにか云った。
多分、ほーじくんと腕を組んで歩いていることを、からかわれたんだと思う。ほーじくんが乏しい光量でもわかるくらい、赤くなったから。
俺は微笑んで黙っていた。
通りの中程に、簡単な木箱やテーブル、椅子が集まっている、広場みたいなところがあった。氷を売っているふたり組が、空中で板状の氷を形成して、お客さん達がきゃあきゃあはしゃいでいた。単純に氷を売るというのではなく、氷をつくるところも見せているのだ。辻芸人である。
多分、氾濫士と、暴風士の組み合わせかな。そうじゃないとしても、水魔法が得意なひとと風魔法が得意なひとの組み合わせだ。
ほーじくんが椅子をひいてくれて、俺はそれは座った。ほーじくんは俺の隣に座る。包みを開けて差し出すと、彼は揚げパンをひとつつまんで、口へ放りいれた。俺もそうする。甘くて、おいしい。
目を合わせ、にこっとする。お互いに。
氷をつくっているふたり組は、場所を移動し、氷のセールスをしているらしい。串焼きを食べているグループが、彼らに銀貨を支払い、氷を二枚つくってもらっていた。歓声が上がる。
さっきまで彼らが氷づくりをしていた場所では、熱魔法と水魔法で、お湯をつくって売っていた。あの場所で自分達が売っているものを見せてから、広場中をまわってセールスする、という方式のようだ。
ほーじくんが席を立ち、近くの屋台へ行った。俺はそれを目で追う。彼は、屋台でスープを買い、戻ってきた。雑穀がはいっていて、山羊肉が幾らかういた、スパイシーな香りのスープだ。お椀はひとつだけど、お匙は二本はいっている。
ほーじくんはそれをテーブルへ置いて、にこっとした。俺はお匙で雑穀をすくい、ほーじくんの口許へ持っていく。彼は嬉しそうにスープを食べた。




