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リッターくんはネクゼタリーさんになにか云う。
ネクゼタリーさんは、数回頷いた。リッターくんは、ユラちゃんのことを喋っているらしい。ユラちゃんがあのあと、門衛と交渉したのだろうか。それとも、門衛を怒鳴りつけたのだろうか。
魔法でぼこぼこにしたという可能性もあるな。ユラちゃんなら、やるかもしれない。やってくれるかも、だ。
笑いそうになってこらえた。俺は怒っているらしい。ニニくんに余計な負荷をかけた門衛に。
ニニくんの額を、わざわざお水でぬらした手巾で、執拗に拭った。その意味はわかる。あのふたりはニニくん達が荒れ地おくりにされる時に、その姿を見たのだ。
荒れ地おくりにされる罪人の情報は、別の国のものでも裾野の公的機関には伝えられるのかもしれない。だから、直に見た訳ではなく、ニニくんの情報を持っているだけ、かもしれない。
でもだったら、カルナさん達のことだって知っている筈だ。それなのに、ほぼ同じタイミングでやってきたニニくん達のなかから、あのひと達はニニくんを選んで、額にしるしがないかどうかを調べた。
ここは裾野で、ディファーズじゃない。女性をものの数にいれないと云うことはない。というか、ディファーズでだって、荒れ地おくりにされた女性ならものの数にいれるだろう。
ねじれてるな。普通ならお葬式だって出してもらえないかもしれない程、権利が乏しいのに、重罪人になったらひとりの人間として扱うのだから。
ともかく、ニニくんを調べるのなら、その後にあんなふうにニニくんをつかまえたままにせずに、カルナさん達も引き続いて調べるのが普通だ。
あのしるしはひとりひとりの額につけられるものだ。ニニくんの額からなくなっていたって、カルナさん達の額からなくなっているかどうかはわからない。カルナさん達はヘジャブを被っていて、額ははっきり見えないのだから、寧ろニニくんよりもしっかり調べるべきだ。
でもあのふたりはニニくんを狙った。
それになにかいやなものを感じる。いやな雰囲気を。
自分が考えてしまったことがいやになる。
調べられるまでは、理解できるのだ。
荒れ地におくられた人間が、戻ってくれば、疑う。それはわかる。荒れ地近くの村で解放されたのでは、とか、移送していた兵達を騙して逃げたのでは、とか、考えるひとは居る。
だから調べるのまではあたりまえだ。でも、ニニくんだけを調べるのはおかしい。




