3810
ユラちゃんと俺は、並んで座っている。向かいにはカルナさんとミエラさんが居た。ユラちゃんは脚を組んでじっと、喋らないし、カルナさん達もじっとしている。
俺は魔力薬を服んだ。みんなに魔力を分配する為だ。たまにこれをしないと、落ち着かない。
もう荒れ地ではないから、暑いなんてこともない。すごしやすい気候だ。誰も熱中症にはなっていないし、状態異常もない。
この気温からすると、もう九月の終わりくらいだろうか。いや、荒れ地に近いところだから、まだ荒れ地みたいな気候っていう可能性もあるよな。それにしても、俺がはじめてこちらへ来た時、荒れ地はそこまで暑いと思うような場所じゃなかった気がするけど、たまたますごしやすかっただけなのかな。それとも今回が、たまたま暑すぎたのかもしれない。荒れ地は二回目だから、比較したって正しい結果を導けそうにない。
ユラちゃんが脚を組みかえる。
なにか喋った。カルナさん達がぱっと、俯け気味だった顔を上げ、ユラちゃんを見る。カルナさんは神聖公の命令による結婚を拒否したそうだけれど、それ以外の点ではディファーズ女性らしく、慎ましくておしとやかな部分が目立つ。男ものの服はいやがるし、男性とは適切な距離を保つ。ああでも、ディファーズでは、女のひとは魔物と戦ったりしないかもしれないな。
ユラちゃんは低めの声で、身振りをまじえずに喋っている。表情もあまり、目立ったものはない。なので、推測の材料が少なく、内容はまったく見当もつかなかった。
いや、あんまり嬉しい話ではないのだろうな、ということはわかる。もしも喜ぶような話なら、ユラちゃんはそれなりに顔に出る。
ユラちゃんが口を噤むと、カルナさんとミエラさんはゆっくりと、顔を見合わせた。俺はちょっとだけ、どきどきしている。もう勝手に不安になるまいと思っていたのに、雰囲気がなんとなく、変な感じなのだ。
カルナさん達は、どちらもちょっとだけ戸惑ったような、もしくは不安そうな顔で、低声で喋った。ミエラさんが数回、小さく頭を振る。カルナさんの声が段々高くなっていく。
ユラちゃんが咳払いすると、ふたり揃って彼女を見る。ユラちゃんは左掌をふたりへ見せて、なにか云った。ふたりは三秒くらい、唖然とする。
こちらのひとが左掌を見せるのは、なにかを誓う時だ。なにか、大きな約束をする時。ユラちゃんはふたりに、重大な約束をした、らしい。




