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じっと耳を傾けていると、わかる言葉はあった。トゥアフェーノだ。
トゥアフェーノ、それに多分、ラシェジルの話もしている。ユラちゃんがたまに口をはさむので、移動手段について話しているのだろう。四人は身振り手振りをまじえて話し、ネクゼタリーさんがいつもの黒いローブの内側から、革製のお財布をとりだした。小さいやつだ。
ユラちゃんが鋭くなにか云い、リッターくんを呼ぶ。リッターくんは口いっぱいにパンを頬張って戻ってきた。懐から巾着をとりだす。ユラちゃんがそれをひったくり、なかから貝貨を数枚出した。
サーダくんがなにか云うが、ユラちゃんは貝貨をじゅうたんへ置いて、巾着をリッターくんへ返した。ネクゼタリーさんがちょっと困った顔になっている。
馬車代について話しているのかな。多分。で、ユラちゃんが出すのか、ネクゼタリーさん……というか、ティヴァインの兄弟が負担するのかで、ちょっともめてるっぽい。
ユラちゃん、お財布リッターくんに預けてたんだ。荒れ地は厳しい環境だから、体力低い組は少しでも体を軽くしたいんだよね。わかる。
ネクゼタリーさんとユラちゃんが低声で喋っている。俺はいたたまれなくて、貝貨を数枚じゅうたんへ置いて、外へ逃げた。なんだかユラちゃんとネクゼタリーさんは、ことあるごとに対立している気がする。
リッターくんがのっそりついてきた。もうパンは飲み込んだみたいだ。
井戸端で、丁稚さんが数人、お皿洗いしていた。楽しそうだ。今は収穫をお休みしているのかな。急いだ様子はない。
きちんと服を着たダストくんが、のろのろ歩いてきた。顔にひっかき傷がある。ナジさんか、もしかしたらドールさんにされたんだろうか。あれって、そんなに叱られるようなことだったのかなあ。わからん。
ダストくんが井戸端で顔を洗い、丁稚さんのひとりが薬を塗ってあげていた。お薬がしみるのか、ダストくんは痛そうにびくっとする。
ナジさんがしかめ面でやってきて、ダストくんをまた叱っているらしい。ダストくんは体を小さくして、申し訳なげだった。丁稚さん達がとりなしているらしい。ナジさんが丁稚さん達に対して、厳しい声を出す。
でも、しばらくするとナジさんの怒りもおさまったのか、ダストくんの肩をぱちんと叩き、一言云ってからこちらへ歩いてくる。
俺とリッターくんに気付いて、ナジさんはにこっとした。リッターくんと話すが、ナジさんは終始にこにこ、リッターくんは常に無表情なので、会話の全容は見えない。




