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サーダくんがしょんぼりして戻ってきた。俺の隣へ座り、ほーじくんに話しかける。ほーじくんは頷いて、なにかを説明しているらしい。リッターくんが立ち上がって丁稚さん達へ近付き、丁稚さんのひとりが頷いて出ていく。
ほかの丁稚さん達が、リッターくんにおずおず話しかけ、リッターくんがそれに無表情で応じていた。丁稚さん達は顔を見合わせてこそこそ喋って、リッターくんにちょっと近寄り、お喋りしている。リッターくんはあまり口数が多くないが、丁稚さん達は楽しいのか、にこにこしていた。
丁稚さんはすぐに戻ってきた。リッターくんが頭を下げて、丁稚さんが持ってきたものをうけとる。丁稚さんは面喰らったみたいで、目を白黒させていた。ほかの丁稚さんが彼をひっぱり、お喋りに加える。
リッターくんは彼らにもお辞儀して、戻ってきた。じゅうたんの上に、手にしたものをひろげる。それは地図だった。
地図!
びくっとした。リッターくんがなにか喋っているらしいのだが、わからないし、今はそれどころじゃない。
俺はじゅうたんに手をついて、地図を見詰めた。以前ここに居た時に、ナジさん達に見せてもらった地図とは違う。範囲がせまかった。海が描かれていないから、それはわかる。
細い線で書かれた、ぐるぐるした模様のようなものが、ところどころにあった。これがこちらの世界の文字なんだ。成程。
波紋を単純にあらわしたようなもの、波紋に足をつけたような形のもの、波紋をふたつ縦に並べたようなものなど、とにかくこちらの文字はぐるぐるしている。
なんじゃこりゃ。これは、読めない。似たような文字ばかりなのだ。まじで、どうやって区別するの、これ。
やっぱり、こっちとあっちじゃ、同じ人間に見えても完全に同じではないのかな。これを文字として認識できるって、みんな賢すぎる。俺は無理。脳の構造からして違うのでは。
唖然としてしまったが、問題は文字のことじゃない。井だ。井をさがして、それを指させば、ここへ行きたいという意思が伝わる。多分。それが無理でも、マオが井のことをなんか伝えたいみたい、とは思ってもらえる筈。
文字らしい模様を見るのをやめて、井をさがした。こっちが荒れ地だから、東だろ。ってことは、この辺りが村だ。西へ向かってしばらく行けば、どこかに井がある。レントまでの道程には絶対に井がある筈だ。俺、行ったもん。
血眼で井をさがしていると、爪が鋭いほーじくんの指が、地図の一点をさした。八角形が描いてあるところだ。




