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ダストくんがナジさんにお説教されている。言葉がわからなくても理解できる。
ダストくんは大きな体を縮こまらせていた。ローブを肩にかけているが、上半身はそれ以外着ていない。ダストくん、おなか割れてるし、僧帽筋凄いな。
その隣で、サーダくんも首をすくめていた。心配そうにダストくんをちらちら見ていて、たまに口をはさもうとするのだが、その度にナジさんが怒鳴るので口を噤んでいる。ナジさんは顔を赤くして、声を枯らしていた。
お説教に一段落ついたのか、ナジさんはふんっと大きく鼻を鳴らし、自分よりも背の高いダストくんに飛びかかるみたいにして髪を掴み、ひっぱった。サーダくんへ向けて頭を下げさせている。ダストくんが喚いたのは、痛い、と云っているのかな。
ナジさんは、シアイル人だったら土下座しているだろう。それくらいの表情と剣幕で、ダストくんに謝らせている。
サーダくんが慌てて、ダストくんの髪を掴むナジさんの手を開かせようとしたが、ナジさんはそうはしない。それだけでなく、もう一方の手で息子のせなかをばちばちと叩く。ダストくんがその度にとびはねる。
ナジさんがダストくんの髪から手をはなした。肩で息をして、よろよろっと後退る。ダストくんに、小さいけれど鋭い声でなにか云いながら、左手の人差し指でぴぴっと追い払うような仕種をした。ダストくんはチュニックを拾い、頭を低くした状態で出ていく。髪がぼさぼさだ。
俺達は、あたらしいじゅうたんの上にクッションを重ねて座り、それを見ていた。口をはさめる情況ではないので、誰もなにも云わない。
じゅうたんを持ってきたのは、リッターくんと丁稚さん達だ。リッターくんはいつの間にか、あたらしいじゅうたんを運んでくるという作業を手伝っていた。リッターくんは責任感が強い。
リッターくんは淡々と、じゅうたんを敷く作業にはいり、ほーじくんはお水が汚れたばけつに雑巾をいれてしまって、外へ出ていった。俺は戸口のすぐ外で手を洗っていたのだが、丁稚さん達は、まだまだ床の上を転がりまわっているふたりに吃驚したみたいで、相談しながらどこかへ行ってしまった。
で、しばらく後、怒り心頭のナジさんが駈け込んできたのだ。もの凄い怒鳴り声を発しながらダストくんをひっぱり起こし、一発殴ったかと思うと、あのお説教がはじまった。それを横目に、怯えた様子の丁稚さん達がじゅうたんの上にクッションを戻して、俺達に座るように促したので、座っている。




