3792
ニニくんが治療するあいだも、ユラちゃんは猛烈に文句を云い続けた。治療が終わるとネクゼタリーさんがニニくんをさらっていって、そのままどこかへ走り去る。
ユラちゃんは段々と涙目になっていって、リッターくんだけでなくほーじくん、それにサーダくんやネクゼタリーさんの文句も云っているらしかった。言葉の途中に人名がはさまるので、それはわかる。
最終的に、ユラちゃんはむっとした顔で、俺にタックルしてきた。俺はよろけ、でもユラちゃんなのでなんとかうけとめて、倒れることは回避した。
ほーじくんが慌てた様子で、俺のせなかに腕をまわし、支えてくれる。ユラちゃんは俺にしがみついて、服に顔を埋め、涙をこらえているらしい。
リッターくんがのっそり立ち上がった。数回、咳込み、とことことこちらへやってくる。ユラ、と云いながら、ユラちゃんの肩を揺すぶるが、ユラちゃんは俺から離れようとせず、まだまだ、甲高い声で文句を喚いていた。
不安なのは、俺だけじゃない。それにはっきりと気付かされた。ユラちゃんだって不安なのだ。いきなり俺に言葉が通じなくなったことで。
俺は微笑んで、ユラちゃんの頭を軽く撫でた。ユラちゃんは動かず、喋るのも辞めている。リッターくんがほーじくんに喋りかけて、おもやのほうへ歩いていった。
一分くらいで、ユラちゃんははなれていった。ささっと目許を拭い、口のなかでなにか云うが、すぐに黙る。
俺を見て、ほーじくんを見て、ユラちゃんは鼻に皺を寄せた。ぴょんっと跳ねるようにしてなにか云い、腰のベルトに通しているポーチから、魔力薬の包みをとりだす。ひと粒もらった。というか、おしつけられた。ほーじくんもだ。
ユラちゃんは自分もひと粒、魔力薬をとると、包みをポーチへ戻した。口へ含み、のみこむ。くいっと顎をしゃくるので、俺もほーじくんもそうした。まずい。
ユラちゃんは俺達が魔力薬を服んだので、満足したらしい。深く頷いている。
ほーじくんと目をかわした。ほーじくんは戸惑っているみたいだが、軽く肩をすくめ、微笑む。俺も微笑み返した。
もしかしたら、シアイル流のなにかなのかな? 仲直りとか、絆を深めるような行動なのかもしれない。騒いでごめんね、とか。
はっきりしたところはわからないが、ユラちゃんなりに気を遣ってくれたのははっきりしている。だから俺はユラちゃんに対して、軽く頭を下げた。
ユラちゃんは面喰らったらしい。でも、すぐにふふっと笑った。ちょっと苦笑気味だけど、笑ってくれたからいいや。




