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俺達はしばらくじっとした後、どちらともなく立ち上がった。手をつないだまま、外へ行く。さすがに、リッターくんも、ほかのみんなも、戻ってくるのが遅すぎる。
ほーじくんはなにも喋らないし、身振りもしない。それでもなんとなく、気持ちは通じている気がする。
勘違いだろうけれど、そう思えているんだからそれでいい。それを云うなら、疑ったり、不安に思うのだって、根拠はさほどじゃない。そっちだって充分に勘違いだ。
ほーじくんがかすかに声を出した。でも、喋った感じではなかった。歌……なのかな。
喋るのよりもよほど単調で、平板なメロディのそれを、ほーじくんは凄く小さな声で、少しだけ歌った。喋っているほうが歌みたいなのが、なんとなく面白い。
「リッター」
ほーじくんがそう云った。ぼーっと、自分の右手の藪を見ていた俺は、ほーじくんが見ているほうを向く。
腰に手を遣って呆れ顔で仁王立ちしているユラちゃんと、井戸の傍にあぐらをかいてゴブレットを持ったリッターくん、杖をしっかり抱きしめて怒ったような顔のニニくんと、弱った様子でニニくんに喋っているネクゼタリーさんが居た。ニニくんは横目でリッターくんを見たり、ネクゼタリーさんをちょっと睨むようにしたり、忙しい。ネクゼタリーさんは弱り切っていた。
「ほーじ」ユラちゃんがなにか云い、ほーじくんがくすくす笑う。ユラちゃんがもっと呆れ顔になる。
それからユラちゃんは、猛烈に文句を云いはじめた。表情と声の調子、それにたまにぴょんっと跳ねたり、手をばたばたさせるので、それがわかる。怒った様子だったニニくんが唖然としてそれを見、ネクゼタリーさんがそれを両腕で捕まえて、ユラちゃんからゆっくりはなれる。ニニくんは怒りの感情をあらわにする女性に慣れていないのか、ユラちゃんの剣幕がこわいのか、ネクゼタリーさんのローブを左手できつく掴んでいた。
リッターくんがユラちゃんが息継ぎする瞬間を狙ってなにか云うと、ユラちゃんのビンタがとんだ。リッターくんなら避けられるだろうに、避けないで、ユラちゃんにペちんと叩かれている。ユラちゃんは手が痛かったみたいで、むぎゅうみたいな声を出してうずくまった。
そりゃあ、リッターくんだ。壁に対して張り手をするようなもので、体力が低いこちらの身が持たない。俺も経験あるからわかるよ。
リッターくんが不思議そうにユラちゃんを見ているので、彼に自覚はない。叩かれても仕方ない過失が自分にあると考えて避けなかったのだろう。




