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やっと笑いをおしこめ、俺とほーじくんは笑いすぎて出てきた涙を拭っていた。俺の左手とほーじくんの右手は、つないである。お互いに寄りかかって、壁に凭れている。なんとなく、いつの間にか、そういうふうになっていた。
ほーじくんは、俺にそういうふうに見せなかっただけで、凄く不安だったんだろう。俺も不安はあった。今も、なくなってはない。
でも、ある程度以上、不安とか、恐怖とか、そういう感情が高まると、たがが外れてしまうのだ。
俺もほーじくんも、その最後の一藁がリッターくんだった。リッターくんが苦しそうで、はらはらして、不安でおしつぶされそうで、それで限界を超えてしまった。
だからこれは、反発だ。あんまりいいものじゃない。それはなんとなくわかる。
でも、こうやってほーじくんと自然に手をつないで、笑いすぎて疲れてぐったりしているのは、なんだか気が楽だった。
サーダくんとダストくんは、俺達がまだ半分笑ったような顔で、だらーっと壁に凭れてひっついているのを、困ったような顔で見ている。時折目をかわし、肩をすくめたり頭を振ったりしながら喋っている。なにがあったのか知らないのか、知っていても俺達が笑っていたのがおかしなことだから戸惑っているのか、どちらだろう。
ほーじくんがもそもそと、ゆっくり喋り、ふたりは揃って溜め息を吐いた。それから顔を見合わせて、早口で言葉を交わす。それなりに長く。
結局、ダストくんがほーじくんへなにか云ってから、ふたりで出ていってしまった。リッターくんの様子を見に行くのだろうか。
俺とほーじくんはぼーっと、なにも喋らないし、声も出さないで、ただ寄り添っている。握っている手をたまに動かす。パンがかごのなかでさめていくのを、なんとなく見ている。
膝を抱えるようにして、ほーじくんにかなり体重をかけた。「ありがとう。ごめんね、ほーじくん」
ほーじくんは身動ぎしたが、俺は彼の表情を見なかった。
俺が謎の言語を喋ったことを、だからほーじくんがどう思ったのか、その手がかりはなにもない。
もしかしたらほーじくんは、誰かにこのことを伝えるかもしれない。マオが変な言葉を喋った、と。なにかそういう、表情なり身振りなりがあるかもしれない。
気にはなるけれど、俺は見なかった。見たくなかった。わからないものをそのままにしていても、それでいい。
ほーじくんを信じる。そう決めた。
決意が必要なのがなんとも情けない。




