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じゅうたんのしみぬきの技術は俺にはない。
とりあえず、汚れていないクッションを、安全地帯まで移動させた。それから、じゅうたんにのっている鍋敷きやお鍋、食器をどける。からになっているもの、床に落ちてしまったお匙、ひっくり返った器は、井戸端まで運んだ。簡単にゆすいで重ねておく。
酸素系漂白剤があればいいのかもしれないが、持っていたとしてもこわくてじゅうたんのしみぬきなんてできないなと気付く。じゅうたんの善し悪しがわからないので、もしかしたらこれが非常に高級なものである可能性もあるし、手は出せない。洗滌人など、家政系職業に任せるのが安全である。
じゅうたん表面の固形物だけはとりのぞいた。タオルでぴぴっとやったのだ。しみこんでしまったシチューは俺にはどうしようもない。ほーじくんを見ても肩をすくめていたので、俺達はそれ以上なにもしなかった。
俺とほーじくんは並んで床へ座り、どういう訳だかにやにやして見つめあっている。
たまに片方が笑い出し、もう片方がつられて、肩をぶつけあいながらしばらく笑う。それがおさまるとまた見つめあいがはじまり、片方が笑うともう片方がつられる。その繰り返しがもう三十分くらい続いていた。どうしても笑いを完全におさえこめないのだ。俺も、ほーじくんも。
リッターくんは凄く苦しい思いをしたんだから、笑うのは申し訳ないんだけど、どうしても笑ってしまう。ユラちゃんが面白かったのもあるけれど、それだけであそこまでむせるかっていうのがある。
天罰をくらってから一番、笑っているみたいだ。ばかみたいにほーじくんと見つめあって、ばかみたいに大笑いして、ばかみたいに肩をぶつけあうのが、どうしてだか辞められないし、それ自体が面白くて尚更笑う。
今までの不安とか重圧みたいなものが、突然ぽんととんでいってしまったみたいな、変な感覚がした。困っていることも不便なことも、俺の悪しき魂も、なくなる訳ない。なのに、そんなような、奇妙な安心感がある。
サーダくんとダストくんが、パンかごを持って、焦った顔で戻ってきた。這入ってくると同時にダストくんがなにか云う。パンを持って戻るのが遅れてごめん、なのか、リッターは大丈夫か、なのか、どちらかだろう。
くすくす笑いの停まらない俺達は、それを仰ぎ、また笑う。ほーじくんがなにか云おうとしたが、ダストくん達のきょとんとした顔が面白かったのだろう。結局はふきだして笑い、後は言葉にならなかった。俺もだ。
ダストくん達はもっときょとんとした。




