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 リッターくんの、口許を覆った手から、トマトシチューがしたたりおちていた。彼のずぼんやじゅうたんが、瞬く間にシチューで汚れていく。ほーじくんが慌てた様子でリッターくんのせなかを叩き、ユラちゃんが唖然としてなにかつぶやく。カルナさん達は呆然で、ぺたんと腰をおろした。

 我に返り、ほーじくんへタオルを渡した。ほーじくんがそれで、リッターくんの手や顔を拭う。リッターくんはタオルを口にあて、苦しそうに咳込んでいる。涙がこぼれていた。ユラちゃんのふくれっ面がそんなに面白かったんだろうか。笑うほど……いや……まあ……うん、面白いけどさ。

 リッターくんの笑いのつぼ、わからん。相変わらず感情が読めない子だな。

 ほーじくんがリッターくんのせなかを叩きながらなにか云っている。リッターくんは頭を振り、ユラちゃんが呆れ顔で立ち上がって出ていった。ここには癒しの魔法をつかえる人間が居ない。恢復(かいふく)魔法をつかえるひとを呼んでくるのだろう。

 そういえばニニくんを見ていない。


 ユラちゃんがなかなか戻らない所為か、カルナさん達も器を置いて、揃って出ていった。俺もニニくんや、恢復(かいふく)魔法をつかえるひとをさがそうと思ったのだが、俺が出ていこうとするとほーじくんが鋭い声を出して俺を停める。

 停められた、と思う。マオ、というのが聴こえたから。

 なので、俺は戸口から逆戻りして、もとの場所へ座った。リッターくんは咽をぜえぜえいわせていて、力ない咳がそれにまざる。いまや、ほーじくんの膝を枕にして、彼はまるまっていた。ゴブレットにお水をいれて、ほーじくんへ渡す。ほーじくんはリッターくんにそれを飲ませたが、リッターくんはまたむせてしまい、お水が沢山こぼれた。

 ニニくんが飛び込んでくる。直後に、ネクゼタリーさんも這入ってきた。

 ニニくんはリッターくんを見てびくっとし、ネクゼタリーさんを仰ぐ。なにか云うと、ネクゼタリーさんが頷いて、リッターくんの体を起こした。そのまま肩をかし、外へつれていく。ニニくんが魔法をつかいながら、三人は出ていった。

 俺とほーじくんは、ふーっと長く息を吐く。ニニくんが居れば、大丈夫だ。きっと。

 ほーじくんが発作的な笑い声をたてた。俺はびくついて、ほーじくんを見る。

 ほーじくんは笑いを低め、多分、俺に謝った。それから、ユラ、なんとか、と云う。それでわかった。ほーじくんもユラちゃんの顔が面白くて、でも笑うのを我慢していたのだ。

 俺とほーじくんは目を合わせ、三秒くらい黙ってから、ひとしきり笑った。気持ちが近付いていくみたいな感覚がした。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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