3784
この村のひと達は、俺達に相当よくしてくれている。
パン生地がそろそろなくなるという頃に、かごを持ったダストくんが戻ってきた。やはりかごを持ったカルナさんとミエラさん、かごを持っていないユラちゃんが一緒だ。ユラちゃんは片手にデーツのお焼きを持って、食べている。荒れ地を脱出したので男装は辞めたようで、カルナさん達のような格好-ヘジャブだった。
ユラちゃんはぴょんと、クッションへ座る。デーツのお焼きの残りを口へ放り込み、身振りでなにか云った。わからん。
が、促されてカルナさん達が置いたかごのなかを見ると、わかった。鮮やかなオレンジのものがはいった壜が数本と、紙包みがある。
オレンジのものは、おそらくマンゴージュースだ。俺がそれをとりあげると、ダストくんがユラちゃんの傍にかがみこんでなにか説明している。壜を指さしていたので、それに関する説明であることは間違いない。もしかしたら、サイン商会のあたらしい商品だったりするのだろうか。
紙包みは、干し肉だった。この辺りではお肉は貴重なのに、バドさんの身振りを見るに、これも持っていけということらしい。
気管支の辺りがむずむずする。俺は恵まれすぎてる。
天罰をくらったことがどうでもいいくらいに、凄く嬉しかった。凄く。
ほーじくんとリッターくんがやってきた。ふたりで、おやきのかごを持っている。俺は涙が出ないように気を付けながら、餞別を収納したところだった。
ダストくんは、サーダくんと並んで、かまどの前に居る。ふたりで楽しそうにお料理中だ。トマトの煮込まれるいい香りが漂っている。ひよこ豆やたまねぎの香りもまざっていた。粗く刻んだナッツがまないたにとりのこされているから、仕上げにいれるのだろう。
丁稚さん達が起きてきて、裏口辺りからにやにやしながらふたりを見ている。ふたりはそれに気付いていない。
ほーじくんは、サーダくんが機嫌よそうにお料理しているので、ちょっと吃驚したみたいだ。一瞬立ち停まる。
サーダくんがほーじくんに気付いて、ちょっと冷たい目をしたが、すぐに苦笑いになった。兄弟はなにか言葉を交わし、ほーじくんは頷いてとことこと、俺の隣に来る。
荒れ地から出たこともあるけれど、この村のひと達のおかげだ。みんな、ほっとしたような顔をしている。俺が一番ほっとしていると思う。
ダストくんが丁稚さん達に気付いたみたいだ。杓子を振り上げてなにか喚く。丁稚さん達は笑いながら出ていってしまった。ダストくんはむっとしていて、サーダくんは笑っていた。
感想ありがとうございます。はげみになります。




