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ボウルのなかには、うすい黄色のものがたっぷりはいっていた。ふたりはくすくすして、その近くへ座る。俺も、流れで座った。
これはパン生地だ。重曹がはいっているタイプ。ここでパンを焼くのかな。でもどうして?
ドールさんがバドさんを呼んだ。バドさんが立ち上がって、かまどへ近付いていく。ふたりがかりでかまどからお鍋をおろし、ルルさんがどこからか持ってきて置いた大きな鍋敷きの上にそれがのった。
ドールさんはふたりになにか云い、外へ出ていく。
ルルさんが俺の手を掴み、パン生地を示し、お鍋を示した。バドさんが口を動かしながら、指で宙をさっとなぞる。……収納空間のこと、かなあ。
しばらく後、挨拶らしい声がして、サーダくんが這入ってくる。ダストくんも一緒だ。サーダくんは髪を下ろしているが、ダストくんはいつにもまして頭が派手である。サーダくんがやったのかもしれない。
サーダくんはきょとんとしてから、こちらへ小走りにやってきた。マオ、というのが聴こえるから、マオさんなにをしているんですか、みたいに云われたのかもしれない。
俺はこみあげてくる笑いをおさえつけ、両手を軽くあげて、持ったものを示した。サーダくんは俺の隣にぺたんと座る。
俺が持っているのは、パン生地だ。それをうすくのばしたものに、ドールさんとナジさんがつくっていたデーツのジャムをのせて、包んでいるのである。
俺と同じ作業をしているルルさんとバドさんが、くすくす笑いながらサーダくんに向けて喋った。サーダくんは小さく頷きながら聴いている。ふたりの言葉が終わると、サーダくんは頭を下げたから、俺の推測はあたっていたらしい。
バドさんとルルさんがパン生地を指さして、収納空間らしいゼスチュアをするので、餞別である、と伝えようとしてくれているのかな、と思ったのだ。これを持っていって、というような意味だと。
ふたりがやることを真似しても咎められなかったので、そのまま続けている。とにかく作業というものは、精神を安定させてくれるらしい。言葉がわからなくても、なんとなく楽しかった。
パン生地を手でちぎりとり、手でのばして、デーツのジャムをのせて包む。それをしたら、ドールさんとナジさんが持ってきた鉄板へのせる。いっぱいになると、どこかへ運ばれていく。多分、オーブンで焼いているのだ。
ダストくんがサーダくんのすぐ傍に片膝をつき、にやにやしてサーダくんになにかささやいた。サーダくんは小さく笑う。ダストくんは頷いて立ち上がり、出ていった。




