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ぐだぐだと考えながら、井戸端で顔を洗った。それで多少、頭がはっきりする。歯を磨くと完全に目が覚めた。おなかがすいているのにも気付いた。
魔物には職業はないのかもしれないし、あるのかもしれないが、それは今気にすることじゃない。ティヴァインの兄弟が険悪な状態になっていたり、ネクゼタリーさんとニニくんが妙な関係性を持っているかもしれないとか、ユラちゃんとサーダくんが対立気味であるとか、リッターくんがほーじくんを宥める場面が多々あるとか、そういうことを考えるべきだ。
それらすべてが俺に起因しているのはもう疑いようがない。それ以外に原因なんて、あるか?
朝日はまだ、地平線の辺りでぐずぐずしている。俺はちらっとそれを見て、歩く。
おもやへ行くと、ナジさんとドールさんが並んで作業していた。ナジさんはいつもよりももっとにこにこして、やわらかい雰囲気で、手にしたデーツをおどけて眉の辺りへ持っていく。ドールさんがくすくすした。仲好し。
ナジさんが俺に気付いて目を瞠った。ぱっとデーツをお鍋へ放り込んでしまう。俺は半笑いでお辞儀した。朝からごちそうさまです。
こういう、ひととひととが仲好くしていて、それになんの陰りもないように思える光景を見ると、気持ちが軽くなる。なんというか、ほっとする。
俺の気持ちが軽くなろうがほっとしようが、ナジさんはかなりはずかしかったみたいで、ボウルを持ち上げて中身のデーツをざらざらっと、すべてお鍋へ投入してしまった。ドールさんが苦しそうに笑っている。夫がうろたえているのが可愛いらしい。
俺はかまどへ近付いていった。お鍋からはいい香りがする。ドールさんが木べらでそれをかきまぜ、ナジさんはボウルを持って外へ逃げていった。なにか云ったのは、洗ってくる、とか、そういう言葉だろう。
ドールさんは、デーツのジャムをつくっているらしい。近寄っていくと、甘みの塊みたいな空気がぶわっと顔へかかった。思わず咳込む。
ドールさんがまた、くすくすっとして、木べらを丁寧に動かした。底が焦げ付かないように、全体をきちんとまぜている。
なにか手伝いたいが、なにをしたらいいかわからない。
こういう時に言葉がないのは、むなしい。
甲高い声がして、ルルさんとバドさんが這入ってきた。手にした大きな、金属製のボウルを、床へ置く。ふたりはドールさんへ挨拶し、俺にも挨拶をくれる。ぎゅっとされたので、ぎゅっとした。
バドさんがうふふっと笑い、ボウルを示した。ボウルには布がかけられている。めくれということらしいので、そうした。
感想ありがとうございます。
ダストくんはひとなつこいでかわいい子です(´▽`)




