3777
ドールさんがくすくすしながら俺達を迎えてくれる。俺達は出入り口のところで、つめたいお水をゴブレットに半分もらった。もてなしの一部なのか、それとも暑いから水分補給させてくれたのか、どちらだろうか。
這入った居間に、ナジさんの姿はなかった。かまどへ歩いていくドールさんがふたことくらい喋り、ダストくんが頷いて、俺とサーダくんを見る。なにか説明してくれている。サーダくんは小さく頷いて、それから大きく頷いた。ナジさんが居ない理由を聴いたんだろう。長老であるナジさんには、いろんな仕事があるのだ。ナジさんは長老のなかでも、子どもだけでなく妻も入山経験者というひとだからな。多分、別格だ。この世界に二年弱、そのうちの数ヶ月は御山に居て、それはよくわかっているつもり。
俺とサーダくんは、ダストくんに促されるまま、クッションへ沈みこむみたいにして座った。ゴブレットを返す。
クッションには相変わらず、カラフルな毛糸であんだカバーがかけられていて、ふかふかだった。ひとつとりあげてあぐらをかいた膝へのせると、いい香りがする。なかに乾燥させたハーブをいれているのだと思う。
ドールさんはいろんなことを工夫するのが好きらしくて、俺が前、ここに居た間も、あたらしい染め粉をつくろうとしたりしていた。お薬の本を読んでメモしたり、お薬を試作して失敗したり、も。
失敗は成功へつながるから、ひとつのお薬ができるまでに何回も失敗するのは、仕方ないんだそうだ。サローちゃんが聴いたら喜びそうに、調剤が好きなのである、ドールさんは。
ドールさんは、いい香りのお茶を淹れてくれていた。すぐに、大きなマグがみっつ、運ばれてくる。ダストくんがサーダくんへ喋りながらマグを配る。マグのなかには、廃帝花が一輪ういていた。最上級のもてなしだ。
ダストくんがサーダくんへ弁明しているらしいのは、表情やなにかでなんとなくわかった。多分だけど、じゅうたんを敷いているといえ床に座らせることを謝っている。何度か床を示したし、大きめのクッションを掴んでサーダくんへ渡そうともしていたから、これへ座ってくれ、とでも云っているのかも。
寄り合い所に大きなテーブルがあるのは、多くがディファーズ人である祇畏士の行に、備えているからだろうと、その時にわかった。
レントでだって、床に座ってご飯を食べることはほとんどない。ディファーズ系らしいリーニくんのおとうと達が、外でじゅうたんを敷いてご飯を食べるのを、荒れ地ふうだとはしゃいでいたくらいである。




