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ダストくんが来て、大袈裟でおどけた仕種でサーダくんにお辞儀した。サーダくんは弟から目をはなし、ダストくんを見て、寸の間きょとんとする。
ダストくんはにやにや笑いでサーダくんの手を掴み、手の甲へ口付け、喋った。それで、サーダくんはこらえきれないみたいにふふっと笑った。
ダストくんがなおも話して、サーダくんの気をひいているうちに、ラトさんがほーじくんとリッターくんをつれていく。ほーじくんとリッターくんは、肩越しにちらっと俺を見て、よく似た頷きをくれた。あのふたり、最近仲好しだな。
サーダくんはダストくんのおかげで、ほーじくんがお祈りをないがしろにしたことを忘れたみたいだ。機嫌よそうに数回頷き、もしくは頭を振ってくすくすする。ダストくんがにっこり笑う。ダストくん、やっぱり歳上男性キラーなんじゃんね。
結局、俺はサーダくんに手をひかれ、サーダくんはダストくんに手をひかれて、一緒にとぼとぼ歩いた。
ダストくんが魔法の灯を飛ばしていたし、サーダくんが絶佳でかすかに光ってくれているので、薄暮でも安全だ。交通事故はこれくらいの時間帯に起こりやすいと聴いたことがある。
この世界だと、うすくらがりに潜んでいる魔物に気付かずに……なんて事故が起こりそうだし、灯はあって困るものではない。
サーダくんはぽつぽつ喋り、ダストくんはそれににこやかに応じている。サーダくんがにこっとしてダストくんに頷く。どうやら、ダストくんを気にいったらしい。それとも、行に何度も来ているから、顔見知りなんだろうか。
ふたりは何故だかがっちりと、指を絡めて手を握り合っていて、こんな場面でなかったら俺はにやにやしてそれをひやかしただろう。でもどうして、こんなに仲好しなんだろう。
ひょっとしたら、このふたりは御山で会ったことがあるのかもしれないのだと、思い至った。そうでなくとも、下山者同士の気安さはあるのかもしれない。入山試験、入山、下山、そのどれも、こちらの世界では特別なつながりを生む重要なものなのだ。それがきっかけで商売の取引相手になったり、結婚が決まったりするくらいには。
サーダくんが入山していたかどうか知らないと気付いた。
俺はなにも知らない。
ダストくんのお家に着いたのは、もうお日さまの光が空からなくなってしまった頃だ。ダストくんとサーダくんは、楽しそうに喋っている。サーダくんの声は弾んで、やわらかく、かすかに甘みを含んでいた。ダストくんの声は低くて甘い。ダストくんって、こんな感じで喋ってたんだな。




