3771
こういうのは祇畏士にそぐわないのだろう。大声でやりとりするというのは。
それに、向こうの好意でおせったいしてくれている場なのだ。そこでこんなに激しい口論をするのは、幾らなんでも礼を失している。祇畏士だろうとそうでなかろうと、ナジさん達に失礼である。
サーダくんが停めてくれないかと、ちらっと見たのだが、サーダくんはしかめ面だがそういうそぶりは見せなかった。胸の辺りにまで持ってきていたゴブレットをテーブルへ戻し、ほーじくんへなにか云う。
その声の調子と表情から、サーダくんはネクゼタリーさん陣営についたとわかった。ほーじくんを責めるか叱るかしていて、ネクゼタリーさんが正しいと応援しているのだ。仲裁は仲裁だろうが、サーダくんらしくない、なんとなくいやな感じの声だった。
まったく意味がわからない。
破局は突然やってきた。ニニくんが席を立ち、出入り口の布をおとしかねない勢いで外へ出ていったのだ。
ほーじくんもネクゼタリーさんもはっとした。ネクゼタリーさんはほーじくんの手を、テーブルへ叩きつけるみたいにしてはなし、ニニくんをおった。ほーじくんが口を大きく開け、席を立つ。
ほーじ、とユラちゃんが云った。ほーじくんがそちらを見る。ユラちゃんは渋い顔だった。ほーじくんを見ずに十秒くらい、ゆっくりと喋った。ほーじくんが眉を寄せて、なにか云い返す。
ユラちゃんがそれに応じると、ほーじくんは不満そうに椅子へ戻った。リッターくんがなぐさめるみたいに優しい声を出しながら、ほーじくんへはちみつ漬けのケーキの器をおしやる。
サーダくんはむっとしているし、俺は生きた心地がしない。
ほーじくんは立って、ナジさん達に近付き、謝ったらしい。ナジさん達は頭を振って、食事を示した。そんなことはいいから、食べてください、という意味だろう。ほーじくんは戻ってきて、哀しげな目で食事をはじめた。何度か、右手をつかう場面で、痛そうにしている。
ネクゼタリーさんとニニくんが戻ってきたのは、食糧が半分くらいになってからだった。ネクゼタリーさんがまっさきに、ナジさん達に謝っている。ナジさん達はやっぱり、食事を示す。
ニニくんは席について、ほーじくんの右手を治療してくれた。その顔に、表情はほとんどない。ネクゼタリーさんが座り、ニニくんに優しく喋りかけた。
俺は山羊の炊き込みご飯をなんとか飲み込んでいたが、味がわからなくてそこで辞めた。席を立ち、お手洗いへ向かう。ここは何度も来たことがあるから、場所は知っている。
外に出てお手洗いまで行く途中で、こちらへ戻ってほーじくんと再会してから、彼が祈りを捧げる場面を見ていないことに気付いた。
感想ありがとうございます。
ネクゼタリー敵にまわすと厄介まじでそうですね。




