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ミエラさんはあいていた席に座った。カルナさんとリッターくんの間だ。
テーブルは細長い四角形をしていて、俺は長い辺の大体まんなか辺りに座っている。向かいがリッターくんだ。
俺の右隣にほーじくん、ニニくんと並び、短い辺にネクゼタリーさんが座って、ニニくんの手を掴んで親しげに喋りかけている。ニニくんの向かいにカルナさん、ほーじくんの向かいにミエラさん、その隣がリッターくん。
俺の左隣にはユラちゃんが居て、ユラちゃんの向かいにはサーダくんが居る。その向こうは、それぞれ空席があり、ネクゼタリーさんの真向かいになるもう一方の短い辺にも、誰も座っていなかった。
これで、全員が着席したことになる。
丁稚さんが窓を閉めた。錠をかける。空気をいれかえる目的で開けたのだろう。ナジさんがなにか云い、リッターくんがまっさきにお祈りをはじめた。
俺は項垂れる。なにをお祈りすればいいんだろうか。
これは単に、感謝なのだとも云うけれど。日々の糧を与えてくれる主への。
天罰が井のお水で解除されますようにと願ってみた。
二分くらいして、いざ食べようかという時、ネクゼタリーさんが唐突に厳しい声を出した。俺はゴブレットへ手をのばした格好で一瞬かたまり、そちらを見る。
ネクゼタリーさんは中腰になって、ほーじくんの手を掴んでいた。ほーじくんは多分、食べものをとろうとしたのだ。金属製のとり皿の位置が少し動いている。その、小さなかちゃんという音は、たしかに聴いた。
ネクゼタリーさんは今まで見たことがないようなこわい顔で、低いけれど鋭く強く、ほーじくんを……責めている? 咎めている? 叱っている?
ほーじくんはむっとした表情で、ネクゼタリーさんを睨みつけていた。短く云い返す。ネクゼタリーさんが尚更なにか云う。その声が段々と、高くなっていく。
迷惑を被ったのはニニくんだ。ふたりにはさまれるような格好になっているのだから。
ニニくんは肩をすくめ、項垂れて、小さく震えている。ネクゼタリーさんは今や怒鳴っていた。ほーじくんも負けじと、声量自体はさほどではないが、鋭くかたい声でやり返す。そのふたりの喋る度、ニニくんは小さくびくっとする。邪魔をしたらいけないと思っているみたいで、ひたすら縮こまっていた。
ナジさんがぽかんとしている。ドールさんはおろおろしている。ダストくんが呆れ顔になっている。
祇畏士とその兄の喧嘩に、テーブルのまわりに居る村のひと達は誰もが驚いていた。ラトさんが笑い飛ばしてくれるなんてこともない。




