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御山歴の長い奉公人に、癒しの力をよっつ以上持った癒し手を知らないか、訊いてほしい。知っているなら、どこのなんというひとか教えてほしい。
それが、ミューくん、そしてジーナちゃんの頼みだ。俺は頷く。
「アロさん、エイジャさん、ファラワさんなら、御山に五年以上居る。そういうことも知ってるかもしれない。訊いてみるよ」
「お願いします。俺以外にもそういうひとが居るなら、どうやって……どうやって、切り抜けていくのか、知りたい」
ジーナちゃんが無言で頷いた。俺も頷く。ミューくんの気持ちは、わかるつもりだ。過去、魔力の高い人間が、魔王との戦いに大勢かりだされて、そして大勢死んでいった。
魔王が居ない、もしくは魔王に戦う気がない場合でも、人間同士で戦うのを辞めない。どこの国家元首だって魔力が高い人間を確保したいのだ。まったくミューくんの云うとおりで、戦争をするくらいなら、魔物を退治に行けばいいのに。
アロさん達が確実に知っているとは限らないが、訊いてみる価値はある。ミューくんが不本意に戦争に参加させられないよう、情報を集めなくちゃ。
ミューくん、ジーナちゃんとじゅうたんへ歩いていった。「マオ、これおいしいわ」
ユラちゃんは生姜ビスケットに夢中だ。俺はにこっと笑う。
ミューくんとジーナちゃんが並んで座り、俺は近くの切り株に腰掛けた。
「マオさん、食べないの?」
「もう少ししたら食べるよ」
「マオ、ごめんなさい」
ジーナちゃんがローブから、もうひとつの折り箱をとりだして、じゅうたんへ置いた。「さっき、フォージ卿に渡そうと思ったのだけれど、ティーアファンダード卿達が居るし、それにわたし、ああ……動揺してしまって」
ミューくんに行われたなにかを思い出したみたいで、ジーナちゃんの呼吸が乱れる。ミューくんがジーナちゃんの肩を抱いて、ジーナちゃんはミューくんの肩に頭を凭せかけた。ふたりはそのまま、黙り込む。ユラちゃんとサキくんも、どことなく痛そうな顔をして、黙ってしまった。
リッターくんが割合、はっきりした声を出した。
「だが、丁度いい。あいつはマオと食事をしたがるだろう。自分の宣言がまわってくるまでに、弁当を食べなくて、よかったと思うに違いない。マオ、俺達は邪魔をしないから、ふたりで食事をするといい」
リオちゃんがにっこりして頷いた。ユラちゃんが鼻で笑う。
「ああら、リッターにしてはいいことを云うじゃないの。そうね。マオはほーじと、ふたりでご飯を食べるのよ。丁度よかったんだわ。なんの問題もないじゃないの、ジーナ?」
ジーナちゃんはほんのかすかに、笑みをうかべた。




