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あ、と、メイリィさんが耳に手をあてた。小さく頷いている。
と、頭に声が響いた。
〈マオ、ごめん!〉
タイティーダさんだ。伝糸で連絡してきたのである。〈メイリィには戻ってもらう。ちょっと、新人達がへましちゃって、洗濯場が色々大変なの。だからメイリィに助っ人してもらうから。まったくもう、いやんなる。ああ、誰かがそっち行くって。だからそれまでリッターさま達から離れないようにって、エイジャが喚いてる。いい? 伝えたからね!〉
俺には伝糸がないので、返事はしようがない。だが、低声ではいと答えた。
メイリィさんがとことこやってくる。「マオ、聴いた?」
「うん。タイティーダさんが、洗濯場が大変って」
「カラが、洗濯場中泡だらけで、洗いものがむちゃくちゃで……もとの通りに、仕分けてるって」
それは酷そうだ。
エイジャさんが喚いているというのは、智慧者のエイジャさんが、しっちゃかめっちゃかになった洗濯もの達を仕分けしていて、タイティーダさんの傍に居るってことかもしれないな。かごがごちゃごちゃになったりしたら、智慧者に手をかりなければやってられない。
ちまきをもぐもぐしていたミューくんが、俺とメイリィさんを見る。
「なにかあったんですか?」
ミューくんを見て、俺はぎこちなく微笑む。学生さん達をまきこむことではないが、メイリィさんが居なくなったらまきこんだのと同じな訳で。
「ええっと、ちょっと。メイリィさん、寮へ戻らないといけなくなっちゃった」
「ああ、大丈夫よ」
ユラちゃんがビスケットをかじりながら云う。「メイリィ、心配要らないわ。マオならちゃんと、わたし達でまもるから。安心なさい」
メイリィさんは小さくお辞儀して、俺の手を軽く握った。
「マオ、ひとりにならないで」
「わかってる。心配してくれてありがとう、メイリィさん」
メイリィさんは頷いて、俺の手をはなし、学生さん達にお辞儀してから走っていった。髪飾りをひとつもつけていない灰色の髪が、うなじの辺りでふわふわしているのが、見えた。
「四月の雨亭に行ったら、なにをしたい?」
サキくんが云って、みんなが考えている。ジーナちゃんはだいぶ落ち着いたみたいで、ミューくんの手をはなさないが、もう目が潤んではいなかった。〈マオ、本っ当にごめん〉再び、タイティーダさんの声がする。〈今日に限って誰も手があいてないんだと! 冗談じゃない。でもごめんね、しばらく誰もそっちへ行けそうにないって。畜生!〉
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