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「悪かったよ」
ミューくんがやわらかく応じると、ジーナちゃんは激しく頭を振って、そのままミューくんに抱き付いた。ミューくんは宥めるようにジーナちゃんを抱きしめる。「あんなことは二度とさせないと誓って」
「それは無理」
「あなたは意地が悪いわ」
ジーナちゃんは泣きじゃくり、ミューくんがその頭を撫でた。
俺達はふたりから少し、距離をとる。ジーナちゃんはしばらく泣いていた。
「ごめんなさい」
すんっと洟をすすり、ジーナちゃんは手巾で目許を拭う。「とりみだして……はしたない」
「そういうくだらないことを云わないで」ユラちゃんが怒った声を出す。「そんなことより、お弁当食べましょ。わたし、おなかすいたわ」
どすんとジーナちゃんの右隣に座り、あぐらをかいて、膝の上で折り箱を開ける。
わっと嬉しそうな声をたてるユラちゃんを、ジーナちゃんは充血した目で、優しく見ていた。「リオもおなかすいたわ」
「僕も」
リオちゃんがユラちゃんの隣に座り、サキくんはその隣に座る。リッターくんが無言で、ジーナちゃんの左隣へ腰をおろした。
ジーナちゃんがローブからお弁当箱をとりだすと、ミューくんがほっとした様子で、俺のところまで来た。低声でお礼を云われる。
「ありがとうございます、マオさん。これ、助かりました」
「もうしばらく持ってて」
俺も低声で云う。「ジーナちゃん、また気分が悪くなるかもしれない」
「ええ……」
ブレスレット、効果があってよかった。魔法をつかうのに必要な魔力が幾らかカットされるんだったよな。
ミューくんは険しい表情で、目を伏せる。顔色は悪いままだ。「あの……ちょっと、いいですか?」
「うん?」
「あの、なんていうか……」
メイリィさんが、すっと離れていった。ミューくんは小さく息を吐く。
「すみません。メイリィさんを信用しない訳じゃないんですけど……どうしたらいいのか……」
「どうしたの? ジーナちゃんが怒ってたことに、関わりある?」
ミューくんは頭を振ってから、思い直したのか、苦く笑った。
「あると云えるのかな。こんなの、誰に相談したらいいのか。親には云いたくないし、先生達は要領を得ないし」
御山の先生に相談してもだめなことなら、俺は確実にわからない。だって異世界から来てるんだぜ。こちらの世界の常識なんてないし、だからこちらの世界のひとがわからないことなんて絶対にわからない。隠してあること、だとしてもそうだ。俺は単なる奉公人に過ぎない。




