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だから、先生達にわからないなら俺にもわからないよ、というようなことを云おうとしたが、ミューくんはそれを遮る。
「とにかくきいてほしいんです。ああ……まず、追加の職業加護は手にはいりました」
「え、すごい、よかったね」
暢気な声が出てしまった。ミューくんはかたい表情で頷く。癒し手の追加の職業加護は、魔力徐々に恢復。効果は小さめだけど、有用な職業加護だ。
それが手にはいったのに、どうしてミューくんの表情は険しいんだろう。
「あの、セロベルさんは、かわった職業とか特殊能力について、研究してたんですよね?」
「え? えーと、研究してたかどうかはわからないけれど、凄くくわしいよ、職業でも、特殊能力でも」
セロベルさんは実技の補助教官だったけれど、いろんな特殊能力や、職業加護にくわしいし、そういうのが好きらしい。リエナさんが云っていた。だから、研究していたのかもしれない。実技の先生達だって、私兵や学生さんの鍛錬に付き合ってばかりじゃないのだ。論文を書いて、まとめて出版するひとだって居る。
ミューくんは数回、小刻みに頷いた。
「それでもいいんです。マオさん、俺、家族に知られたくなくて。ちゃんと、先生がたには、報せないでほしいって頼んで、報せないでくれるらしいんです。だから今日、したに降りたら、セロベルさんに相談しようと思って」
「えーっと、話が見えないんだけど」
「ああすみません、ちょっと混乱してて」ミューくんは一度、ぎゅっと目を瞑る。「マオさん、長く御山で勤めているひとが、下働きのひとのなかにも居るでしょう?」
「ああ、うん、居るよ」
今は、アロさんが一番の古株だ。六年くらい御山に居る。アロさん程ではないが、ファラワさん、エイジャさん、あとアクリダさんジャラードさんも、それなりに御山歴が長い筈。トルさん、ラウトさん、キーラさん、トロームさん、あと多分レクトラさんも、少なくとも二年以上は御山に居ると思う。
「そういうひとに尋ねてほしいことがあるんです。あの、内密に」
「なにか、困ってるのなら、幾らでも協力するけど」
「困惑してます。とても」
ミューくんは右手を数回、小さく振る。「ああもう、どうして俺ばかりこんな目に……俺癒し手になれたんです」
頷く。ミューくんは口を数回、ぱくぱくさせる。
俺は促す。
「それで?」
「大問題発生ですよ。癒し手の職業加護は知ってます?」
「癒しの力」
「ご名答」ミューくんは皮肉っぽく笑った。「ところが、開拓者は俺に特別に目をかけてくれたみたいなんです。それとも開拓者でも、つまらない失敗をするのかもな。癒しの力なのは間違ってませんけど、ふたつでした。俺は計よっつの癒しの力を持ってしまったんです」




