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手遊びはリッターくんが勝ったらしい。俺にはわからんが、リオちゃんが残念そうにしていたので、そうなのだろう。リッターくんは嬉しいのか嬉しくないのか、ちょっと肩をすくめただけだった。
サキくんが息をのんだ。「ジーナ」
リッターくんが立ち上がる。一拍遅れて、リオちゃんとユラちゃんもそうした。俺は、湖のほうへ振り向く。
ミューくんが歩いてきていた。彼は、ジーナちゃんを横抱きにしている。ジーナちゃんはミューくんの首に両腕をまわし、肩口に顔を埋めていた。
サキくんが駈け寄っていく。俺も、ユラちゃんも、リオちゃんも、リッターくんもだ。
近付くにつれ、ミューくんの顔色が凄く悪いのがわかった。ジーナちゃんは震えている。とても寒いところに居たみたいに。
「ミューくん、ジーナちゃん」
「マオさん、じゅうたんを出してもらえませんか。ジーナを横にさせたい」
俺は頷いて、じゅうたんを道の脇の芝生の上へ出した。リッターくんがそれにとびついて、ひろげ、整える。「ミュー、いいぞ」
「ああ、ありがとうリッター」
ミューくんはじゅうたんに膝をつき、ジーナちゃんの体をおろした。ジーナちゃんはミューくんの首に両腕をまわしたままだったが、ミューくんがその腕を優しく叩くと、腕を解く。そのまま、両手で顔を覆ってしまった。きらっと、ジーナちゃんの頬で光を反射したのは、涙だろう。
俺は薄手のケットをとりだし、ミューくんに渡した。ミューくんは低声でありがとうございますと云い、それをジーナちゃんの体にかける。
「ねえ、燕息は……」
「かけたけど、動揺が大きすぎて、効きが悪い」
リオちゃんに短く返し、ミューくんはけれど、ジーナちゃんを治療しようとはしていた。ジーナちゃんは数回、苦しそうにしゃくり上げる。ミューくんは左耳に髪をかける。
俺は収納空間から、魔力に好影響だというブレスレットをとりだした。たてなくなったラシェジルを助けた時、お礼にもらったものだ。「ミューくん、これ」
ミューくんは険しい表情で頷いて、ブレスレットを掴み、右手首にはめて、もう一度魔法をつかう。メイリィさんがすーっとやってきたが、手を出そうとはしない。ミューくんのぴりぴりした雰囲気で、なにもしないほうがいいと判断したのだろう。
ジーナちゃんが左手で、ミューくんの膝の辺りへ触れた。「あなたは認めるべきじゃなかった。あんな行い」
「君は随分、慈悲深いんだな」
「あのひと達の心配なんてこれっぱかしもしていないわ!」
ジーナちゃんが喚きながら上体を起こした。両目から涙がぼとぼととこぼれ落ちる。「心配していないって云うのは間違いね。わたしはあのひと達を憎むわ。あんなひと達死んでしまえばいいのよ」




