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ほーじくんは裸足だ。膝がぬけたずぼんをはいて、よれたチュニックを着て、裾や袖口がほつれているローブを羽織っている。
左右に居るのは、二十歳を幾らか過ぎたくらいの羽持ちふたり。どちらも神おろしだ。神聖公国寮の傍で見かけたことがある。御山に派遣される神おろしというのは、随分位が高いか、名家の出身らしく、面識を持とうとディファーズの男子学生達が群がっていたので覚えている。
あちらも多分、俺を知っている。フォージ・ティヴァインの人生の障害、邪魔者として。
宣言に立ち会う神おろしには、人数制限はないらしい。だから多分、このひと達も、ほーじくんの宣言に立ち会うのだろう。
それまで、俺と絶対に接触させない、もしくは宣言以降も接触させないつもりなのだと思う。ほーじくんは、祇畏士になったら封印ができるかもしれない、ディファーズにとっての重要人物だ。
そして、祇畏士というのは、縁切りも婚姻も自由にできる。女性祇畏士が妻を持つのが大流行した時代もあると聴いた。ディファーズでは、女性同士の恋愛は、あまりおおっぴらにはできない類のものらしいのに、だ。
ほーじくんが宣言直後、俺と一緒に井に行って、証人の前で誓えば、俺とほーじくんは誰に邪魔されることもなく結婚できるのだ。
だから、それをさせない為に、見張っている。そういうことだろう。
あほらしい。
ほーじくん含む羽持ち三人は、足を停める気配がない。リッターくんとリオちゃんがさっと脇に飛び退いて、道をあけた。
が、反対に、ユラちゃんがとびだして、ほーじくんの前に立ちはだかる。三人の足が停まった。
ほーじくんの左に居る羽持ちが、ユラちゃんをばかにするような目で見た。「お嬢さん、はしたない真似はよしなさい」
「ごきげんよう、ティーアファンダード卿」ユラちゃんは丁寧にお辞儀をし、羽持ちを睨んだ。彼女は小さいが、気迫は大人に負けない。「わたくしは御山の学生として、御山の規律をまもることを第一に考えております。あちらではすでに、ファバーシウス卿が宣言中です。断りもなく湖へ向かうのは、ファバーシウス卿に対して無礼です」
「御山というのは随分、お嬢さんがたに無理を云うらしい。ここにはあなた以外に四人も男が居るというのに。淑女ならば男に先んじて意見するなど、あってはならぬ。ディファーズならばそのようなことは教えない」
「ここは御山ですわ、ティーアファンダード卿」




